毎年の楽しみであるボーナス(賞与)。でも「必ずもらえるもの」と思っていると、退職のタイミングなどで思わぬ落とし穴があります。まずは「そもそも会社に支払義務があるのか」から確認しましょう。
ボーナスに支払義務はある?
結論として、賞与の支払いは法律で義務づけられていません。労働基準法には毎月の賃金(給与)に関するルールはありますが、賞与の支給そのものを義務づける規定はないのです。支給の有無・金額・対象者は、原則として会社の裁量に委ねられています。
ただし、次のように会社のルールで賞与の支給条件が定められている場合は、それが「賃金」として支払義務の根拠になります。
- 就業規則に「賞与は年2回、◯月と◯月に支給する」などの定めがある
- 労働契約・労働条件通知書で賞与の支給が約束されている
- 労働協約(労働組合との取り決め)で定められている
逆に言うと、これらに定めがなければ、会社は賞与を支給しなくても直ちに違法とはなりません。まずは自社の就業規則の賞与規定を確認するのが第一歩です。労働条件の明示については 労働条件通知書の書き方 もどうぞ。
「支給日在籍要件」とは(退職時の最重要ポイント)
賞与でいちばんトラブルになりやすいのが、退職するときの扱いです。多くの会社は就業規則に、「賞与は支給日に在籍している者にのみ支給する」という支給日在籍要件を定めています。
この要件は、最高裁判例(大和銀行事件・昭和57年10月7日)で、合理性があり有効と判断されています。つまり、就業規則に明記され従業員に周知されていれば、支給日より前に退職した人は、その賞与を受け取る権利がないのが原則です。
ここが落とし穴。たとえば「6〜11月の働き」を査定対象とする冬の賞与でも、支給日(例:12月10日)より前に自己都合で退職すると、その期間フルに働いていてももらえないことがあります。退職・転職を考えるなら、就業規則で賞与の支給日と在籍要件を必ず確認し、可能であれば支給日の後に退職日を設定すると安全です。退職の進め方は 退職届の書き方 をどうぞ。
賞与の「算定期間(査定期間)」とは
賞与は、一定の算定対象期間の勤務成績・会社業績をもとに計算されるのが一般的です。たとえば「夏の賞与は前年12月〜当年5月」「冬の賞与は6月〜11月」のように、支給日より前の期間が対象になります。
この期間に欠勤・遅刻・休職などで労務を提供しなかった日があると、その分が評価に反映され、賞与が減額されることがあります(就業規則の定めによります)。
産休・育休による減額には注意(不利益取扱いの禁止)
注意したいのが、産前産後休業や育児休業を取った場合です。実際に休んだ日数(労務を提供しなかった分)に応じた減額は一定の範囲で認められますが、産休・育休を「理由」とする不利益な取扱いは法律で禁止されています。休んだ日数に対応する範囲を超える減額や、休業取得を理由にした不支給はマタニティ・ハラスメントとして認められません。育休中の給付は 育児休業給付金 もご確認ください。
ボーナスが減額・不支給になるケース
- 会社の業績悪化……就業規則に「業績により支給しないことがある」等の定めがあれば、減額・不支給もあり得ます。
- 人事評価(査定)が低い……成績査定の結果として金額が下がることがあります。
- 算定期間中の欠勤・休職……労務提供がなかった分の減額。
- 支給日在籍要件を満たさない……支給日前の退職。
ただし、いったん金額や支給条件が就業規則・契約で確定しているのに、会社が一方的に不利益に変更・カットすることは原則できません。すでに支給が確定した賞与の不払いは「賃金の未払い」になり得ます。おかしいと感じたら、就業規則の規定と照らして確認しましょう。
パート・アルバイト・契約社員の賞与は?
パートやアルバイト、契約社員でも、賞与の有無は労働条件通知書で明示することが必要です(「賞与なし」も明示事項)。また、正社員と職務内容などが同じなのに賞与に不合理な格差を設けることは、同一労働同一賃金のルールで問題になり得ます。詳しくは パート・アルバイトの労働条件通知書 をどうぞ。
実務でよくあるつまずき
- 支給日在籍要件が就業規則に書かれていない。「うちは昔からそういう運用」という慣行だけで退職者を不支給にすると、争いになったとき根拠を示せません。在籍要件は就業規則に明記し、従業員に周知して初めて機能します。
- 求人票や労働条件通知書に「賞与あり」とだけ書く。算定期間・支給条件・「業績等により支給しないことがある」旨まで書かないと、「もらえるはず」という期待とのギャップがトラブルの火種になります。
- 退職者の賞与から社会保険料を引いてしまう。資格喪失(退職)月に支給した賞与は、社会保険料がかからない場合があります(月末退職などを除く)。月給と同じ感覚で控除すると引きすぎです。会社側の届出は 賞与支払届の書き方 で確認してください。
ボーナスの金額・手取りを知りたいときは
もらえる前提で「いくら手元に残るか」を知りたいときは、無料ツール・コラムをご利用ください。賞与からは社会保険料・所得税が引かれます(住民税は引かれません)。
- 🛠 賞与(ボーナス)計算ツール……額面から手取りの目安を計算。
- 🛠 平均賞与を調べるツール……業種別・都道府県別の賞与相場を確認。
- 📄 賞与(ボーナス)の手取り|引かれるものと計算……引かれるもののしくみを解説。
- 📄 ボーナスの平均はいくら?業種別の平均賞与……相場・「何か月分」の目安。
計算例:賞与40万円・30歳・扶養なし・前月の給与(社会保険料控除後)25万円・協会けんぽ(三重県・2026年度)の場合、社会保険料58,600円(健康保険19,540円・厚生年金36,600円・子ども子育て支援金460円・雇用保険2,000円)と所得税13,942円(税率4.084%)が引かれ、手取りは327,458円(額面の約82%)です。
根拠・出典
- 賃金の定義・賞与など「臨時の賃金等」の定めがある場合の就業規則への記載:労働基準法 第11条・第89条第4号。
- 支給日在籍要件の有効性:大和銀行事件(最高裁 昭和57年10月7日判決)。
- 産休・育休を理由とする不利益取扱いの禁止:男女雇用機会均等法 第9条第3項、育児・介護休業法 第10条。
- パート・有期雇用への賞与の有無の明示、不合理な待遇差の禁止:パートタイム・有期雇用労働法 第6条・第8条。
- 賞与の社会保険料(標準賞与額の上限=健保は年度累計573万円・厚年は1か月150万円):健康保険法 第45条、厚生年金保険法 第24条の4。
- 賞与の源泉所得税:所得税法 第186条・別表第四「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」。
よくある質問
ボーナスは必ずもらえますか?会社に支払義務はありますか?
法律上の支払義務はありません。ただし就業規則・労働契約・労働協約に賞与の支給条件が定められていれば、それが「賃金」として支払義務の根拠になり、会社は定めに従って支払う必要があります。まずは就業規則の賞与規定を確認しましょう。
退職するとボーナスはもらえなくなりますか?支給日在籍要件とは?
多くの会社は「支給日に在籍する人にのみ支給する」支給日在籍要件を定めており、判例(大和銀行事件・最高裁 昭和57.10.7)でも有効とされています。査定期間に働いていても、支給日前に自己都合退職するともらえないことがあるため、退職日は支給日を確認してから設定するのが安全です。
欠勤・休職・産休育休があると賞与は減りますか?
算定期間に労務提供がなかった分(欠勤・休職など)に応じた減額はあり得ます。ただし産休・育休を理由とする不利益取扱いは禁止されており、休んだ日数に対応する範囲を超える減額や、取得を理由とした不支給は認められません。
業績が悪いとボーナスはカット・不支給になっても仕方ないですか?
就業規則に「会社の業績等により減額し、または支給しないことがある」といった定めがあれば、業績悪化による減額・不支給は基本的に有効です。一方、金額や支給条件がすでに確定した賞与を会社が一方的にカットすることは原則できず、確定後の不払いは賃金の未払いになり得ます。まずは就業規則の賞与規定と、どの段階まで決まっていたかを確認しましょう。
賞与から社会保険料や税金はどれくらい引かれますか?
社会保険料(健康保険・厚生年金など)と所得税が引かれ、住民税は引かれません。たとえば賞与40万円・30歳・扶養なし・前月の給与(社会保険料控除後)25万円・協会けんぽ(三重県・2026年度)の場合、社会保険料58,600円と所得税13,942円が引かれ、手取りは327,458円(額面の約82%)です。自分の条件では 賞与(ボーナス)計算ツール で試算できます。
本記事は2026年7月時点の情報をもとにした(2026年7月12日 加筆)一般的な情報提供であり、個別事案への適合性を保証するものではありません。賞与の支給条件は会社の就業規則・労働契約によって異なります。具体的なトラブルや個別の判断については、就業規則を確認のうえ、酌井社労士事務所 などの専門家にご相談ください。