試用期間とは、採用した人が自社に適性があるかを見極めるための、入社後の一定のお試し期間のことです。多くの会社が3か月程度の試用期間を設けています。ただし、試用期間中であっても労働契約はすでに成立しており、「気に入らないから」と自由に辞めさせられるわけではない点に注意が必要です。
試用期間の長さの目安
法律で長さが決まっているわけではありませんが、実務では3か月〜6か月が一般的です。適性を見るのに不相応に長い期間(1年など)は、労働者に不安定な地位を長く強いるものとして、無効と判断されるおそれがあります。延長する可能性がある場合は、あらかじめ「最長○か月まで延長することがある」と定めておきます。
本採用の見送り(本採用拒否)はどこまで認められる?
試用期間中・期間満了時の本採用拒否は、法律上は「解雇」として扱われます。通常の解雇よりは広く認められる余地があるものの、客観的に合理的で、社会通念上相当と認められる理由が必要です。
- 経歴詐称が判明した
- 正当な理由のない遅刻・欠勤を繰り返す
- 指導しても改善が見られず、業務に必要な能力を欠く
「なんとなく合わない」「思っていた印象と違う」だけでは、本採用拒否は認められにくいです。指導や注意の記録を残しておくことが大切です。
14日を境に手続きが変わる
試用期間中でも、入社から14日を超えて働いてもらった人を解雇する場合は、原則として30日前の予告または解雇予告手当が必要です。「試用期間中だから予告はいらない」と扱えるのは、入社から14日以内に限られます(労働基準法第21条)。
解雇予告が必要かどうかのケース早見表
4月1日入社の例で整理します。予告なしで解雇できるのは4月14日までです。
| ケース(4月1日入社) | 予告 | 必要な対応 |
|---|---|---|
| 4月10日に解雇(入社10日目) | 不要 | 予告・予告手当とも不要。ただし解雇そのものに合理的な理由は必要です。 |
| 4月25日に即日解雇(入社25日目) | 必要 | 30日分の平均賃金(解雇予告手当)を支払います。平均賃金が1日1万円なら30万円です。 |
| 5月15日に「6月14日付で解雇」と予告 | 必要 | 30日前の予告なので予告手当は不要。予告が20日前しか取れないなら、足りない10日分の手当を払います。 |
| 試用期間3か月の満了時に本採用拒否 | 必要 | 解雇として扱われるため、30日前の予告(または予告手当)と合理的な理由の両方が必要です。 |
予告手当の金額は 解雇予告手当 計算ツール ですぐに確認できます。
労働条件通知書での明示の仕方
試用期間を設ける場合は、その有無・期間・本採用後との条件の違い(試用期間中の賃金が異なるなど)を、労働条件通知書に明記しておきます。記載があいまいだと、後の本採用拒否や条件変更でトラブルになりやすいためです。記載すべき事項の全体像は 労働条件通知書の書き方 をご覧ください。
実務でよくあるつまずき
- 「試用期間中は自由に解雇できる」という思い込み。14日以内で不要になるのは「解雇予告」だけです。解雇の理由の要件はなくならないため、入社3日目でも「なんとなく合わない」だけの解雇は無効と判断されえます。
- 最初の3か月を有期契約にして「更新しない」で終わらせる。契約期間の実質が試用期間なら、期間満了でも当然には終了せず、本採用拒否(解雇)と同じ枠組みで判断した最高裁判例があります(神戸弘陵学園事件)。有期契約は解雇規制の抜け道にはなりません。
- 根拠のない延長。「もう少し様子を見たい」と口頭で延ばす運用は通りません。延長する可能性があるなら、「最長3か月延長することがある」のように、延長の条件と上限を就業規則と労働条件通知書にあらかじめ定めておきます。
ひな形を使えば記載漏れを防げる
当事務所の無料ツールでは、試用期間の欄を含む正社員・パートなどのひな形から、その場で作成・印刷できます。入力した内容は外部に送信されず、お使いの端末内だけで処理されます。
根拠・出典
- 解雇予告(30日前の予告または解雇予告手当):労働基準法 第20条。
- 試用期間中の予告の適用除外(入社から14日以内):労働基準法 第21条。
- 解雇には客観的に合理的な理由・社会通念上の相当性が必要:労働契約法 第16条。
- 試用期間の法的性質(解約権留保付の労働契約)と本採用拒否の判断枠組み:三菱樹脂事件(最高裁大法廷 昭和48年12月12日判決)。
- 有期契約を試用期間の趣旨で用いた場合の扱い:神戸弘陵学園事件(最高裁 平成2年6月5日判決)。
よくある質問
試用期間はどのくらいの長さが適切ですか?
法律で長さは決まっていませんが、実務では3か月〜6か月が一般的です。1年など不相応に長い期間は、労働者に不安定な地位を長く強いるものとして無効と判断されるおそれがあります。
試用期間中なら自由に辞めさせられますか?
いいえ。試用期間中でも労働契約は成立しており、本採用拒否は法律上「解雇」として扱われます。通常の解雇より広く認められる余地はあるものの、客観的に合理的で社会通念上相当と認められる理由が必要です。
試用期間中の解雇に解雇予告は必要ですか?
入社から14日を超えて働いた人を解雇する場合は、原則として30日前の予告または解雇予告手当が必要です。予告がいらないのは入社から14日以内に限られます。
試用期間は延長できますか?
就業規則や労働契約に「延長することがある」旨と上限をあらかじめ定めていれば延長できます。根拠なく一方的に延長することはできません。延長後の合計期間も、適性の判断に必要な範囲にとどめます。
試用期間中は社会保険に入れなくてもよいですか?
いいえ。加入要件を満たす人は、試用期間中でも入社日から健康保険・厚生年金・雇用保険に加入させる必要があります。「本採用が決まってから加入」という運用は認められません。
本記事は2026年7月時点の情報をもとにした(2026年7月12日 大幅加筆)一般的な情報提供であり、個別の事案への適合性を保証するものではありません。法令は改正されることがあります。具体的なご対応は、酌井社労士事務所までお気軽にご相談ください。