障害福祉サービスの事業所にとって、職員の賃金原資に直結するのが「福祉・介護職員等処遇改善加算」です。令和8年6月の報酬改定で区分が再編され、対象サービスも広がりました。「結局いくら入るのか」「どの区分を取れるのか」を、計算のしくみから順に見ていきましょう。
処遇改善加算とは?
福祉・介護職員等処遇改善加算は、福祉・介護の現場で働く職員の賃金改善を目的に、障害福祉サービス等報酬に上乗せして支給される加算です。かつては「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」と3本に分かれていましたが、これらは一本化され、現在の区分(Ⅰ〜Ⅳ)に整理されています。
受け取った加算額は、原則として全額を職員の賃金改善に充てる必要があります。計画書の提出と、年度終了後の実績報告がセットで求められる点が、ほかの加算と大きく違うところです。
加算額の計算方法
加算額は、次の式で計算します。
加算額 = (処遇改善系の加算を除いた)1か月の総単位数 × サービス別の加算率
そのうえで単位数を円に換算します(加算単位数 × 単位単価)。ここで、もとの請求金額も「総単位数 × 単位単価」で出ているため、結局加算額(円)= 処遇改善系を除いた請求金額(円)× 加算率となり、単位単価(地域区分)が分からなくても見込額を出せます。
計算の例
- 生活介護で1か月の請求金額(処遇改善系を除く)が500万円、加算Ⅰ(イ)9.3%の場合……500万円 × 9.3% = 約46.5万円が処遇改善加算の月額の目安。
- 居宅介護で同じ500万円、加算Ⅰ(イ)44.6%の場合……500万円 × 44.6% = 約223万円。サービスによってこれだけ差が出ます。
正確には「総単位数 × 加算率 → 1単位未満を四捨五入 → 単位単価を掛けて1円未満を切り捨て」の順で算定するため、円ベースの概算とは十数〜数十円ずれることがあります。
加算区分(Ⅰ〜Ⅳ)の違い
処遇改善加算には区分があり、上位ほど加算率が高く、満たすべき要件も多くなります。
| 区分 | 位置づけ(加算率の高さ) |
|---|---|
| 加算Ⅰ(ロ) | 最上位(令和8年6月新設・生産性向上等の取組が要件) |
| 加算Ⅰ(イ) | 上位(従来のⅠに相当) |
| 加算Ⅱ(ロ) | (令和8年6月新設) |
| 加算Ⅱ(イ) | (従来のⅡに相当) |
| 加算Ⅲ | 中位 |
| 加算Ⅳ | 下位(経過的な区分) |
上位区分ほど、キャリアパス要件(職位・職責・職務内容に応じた賃金体系、研修体制、経験・技能のある職員の処遇など)や職場環境等要件を多く満たす必要があります。どの区分を算定できるかは、事業所の体制届の内容で決まります。職位に応じた賃金体系づくりには 賃金表(号俸表)の作り方 もご参考にどうぞ。
加算率はサービスで大きく違う
加算率はサービス種類ごとに設定されています。人件費の割合が高い訪問系は高く、通所系・就労系は低めです。代表的なサービスの加算Ⅰ(イ)の率は次のとおりです(令和8年6月以降)。
| サービス(例) | 加算Ⅰ(イ)の加算率 |
|---|---|
| 居宅介護・同行援護 | 44.6% |
| 行動援護 | 41.1% |
| 重度訪問介護 | 37.2% |
| 共同生活援助(介護包括型) | 16.3% |
| 放課後等デイサービス | 15.5% |
| 児童発達支援 | 15.2% |
| 就労継続支援B型 | 10.5% |
| 生活介護 | 9.3% |
| 計画相談支援・障害児相談支援 ほか相談支援系 | 5.1%(一律) |
同じ「加算Ⅰ(イ)」でも、居宅介護とその他では4倍以上の差があります。複数サービスを運営している事業所は、サービスごとに分けて計算する必要があります。
令和8年6月改定のポイント
令和8年6月の障害福祉サービス等報酬改定で、処遇改善加算は次のように見直されました。
- 生産性向上・協働化等に取り組む事業者向けの上位区分「加算Ⅰ(ロ)・Ⅱ(ロ)」が新設(従来のⅠ・Ⅱは「Ⅰ(イ)・Ⅱ(イ)」に再編)。
- 計画相談支援・地域相談支援・障害児相談支援が新たに対象に(加算率は一律5.1%)。これまで相談支援系は対象外でした。
- 加算Ⅰ・Ⅱの要件(経験・技能のある職員の年収要件など)も見直し。
なお、令和8年4〜5月分は令和7年度と同じ加算率で計算し、6月分(サービス提供分)以降が新しい加算率になります。切り替え時期の取り違えに注意してください。
算定までの流れ
- ①体制届・処遇改善計画書の提出……算定する区分と、賃金改善の見込み・要件への対応を記載して、指定権者(都道府県・市町村)へ提出。
- ②毎月の算定……上の式で各サービスの加算額が報酬に上乗せされ、国保連経由で支払われます。
- ③実績報告……年度終了後、受け取った加算額をどのように賃金改善に充てたかを報告します。
月額の見込みはツールで確認
サービス種類と加算区分を選び、1か月の請求金額を入れるだけで、処遇改善加算の月額見込みを計算できる無料ツールを用意しています。複数サービスの合算にも対応し、令和8年6月以降の加算率に対応しています。
よくある質問
障害福祉の処遇改善加算の加算額はどう計算しますか?
処遇改善系の加算を除いた1か月の総単位数(または請求金額)に、サービス種類ごとの加算率を掛けて計算します。たとえば居宅介護で加算Ⅰ(イ)なら44.6%、生活介護なら9.3%というように、サービスと加算区分(Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ・Ⅳ)で加算率が決まります。
処遇改善加算の区分(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ)はどう違いますか?
加算Ⅰが最も加算率が高く、Ⅳに向かって低くなります。上位区分ほどキャリアパス要件や職場環境等要件などの要件が多く、満たすほど高い加算率を算定できます。令和8年6月の改定で、生産性向上等に取り組む事業者向けの上位区分「加算Ⅰ(ロ)・Ⅱ(ロ)」が新設され、従来のⅠ・Ⅱは「Ⅰ(イ)・Ⅱ(イ)」に再編されました。
令和8年6月の改定で処遇改善加算は何が変わりましたか?
主な変更は3点です。①生産性向上等に取り組む事業者向けの上位区分「加算Ⅰ(ロ)・Ⅱ(ロ)」が新設、②計画相談支援・地域相談支援・障害児相談支援が新たに対象(加算率一律5.1%)に、③加算Ⅰ・Ⅱの要件(経験・技能のある職員の年収要件など)の見直し、です。
本記事は2026年6月時点の情報をもとにした一般的な情報提供であり、個別事案への適合性を保証するものではありません。加算率・要件は報酬改定で変わることがあります。最終的な加算率・算定できる区分は、必ず指定権者(都道府県・市町村)の通知や国保連の請求情報でご確認ください。出典:こども家庭庁/厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定」。処遇改善計画書・実績報告、賃金規程の整備などのご相談は 酌井社労士事務所 へどうぞ。