賃金表(号俸表)は、等級と号俸の組み合わせで基本給を決める一覧表です。「作り方が分からない」という相談は多いのですが、決めるのは等級・号俸・ピッチ・初号額の4つだけ。この記事では、4ステップの作り方に加えて、モデル賃金表のサンプル・既存社員の乗せ替え・運用ルールまで、導入の実務を通しで解説します。
賃金表(号俸表)とは
縦に号俸(勤続・評価による段階)、横に等級(役割・職能のランク)を並べ、交わるマスに基本給を書いた表です。「誰がなぜその給与なのか」を説明でき、昇給の見通しを示せます。場当たり的な賃金決定・属人的な相場観から卒業するための土台です。
作り方の手順(4ステップ)
- 等級を決める。役割・職能のランク。中小企業なら3〜6等級が目安です(例:1等級=一般、2等級=中堅、3等級=主任・リーダー、4等級=管理職)。
- 号俸の数を決める。1等級あたり20〜40号程度が一般的。少なすぎると数年で頭打ちになります。
- ピッチ(1号あたりの昇給額)を決める。年1回1号昇給の運用なら、ピッチ≒年間昇給額です。上位等級ほど大きくする設計が主流です。
- 各等級の初号額を決める。その等級のスタート金額。ここが採用時の提示額の基準になります。
4つが決まれば、各マスは「初号額+(号−1)×ピッチ」で自動的に埋まります。
モデル例(3等級のサンプル)
| 等級 | 想定する役割 | 初号額 | ピッチ | 1号〜30号の範囲 |
|---|---|---|---|---|
| 1等級 | 一般(入社〜) | 200,000円 | 2,000円 | 200,000〜258,000円 |
| 2等級 | 中堅・独り立ち | 230,000円 | 2,500円 | 230,000〜302,500円 |
| 3等級 | 主任・リーダー | 270,000円 | 3,000円 | 270,000〜357,000円 |
隣り合う等級は範囲が少し重なるのが普通です。ただし重なりが大きすぎると「昇格しても増えない」逆転が起きます。上の等級の初号は、下の等級の中位(10〜15号あたり)と同水準になるよう調整すると自然です。
運用ルールもセットで決める
- 昇給(号俸アップ):年1回、評価に応じて0〜3号など。標準は1〜2号と決めておくと運用しやすいです。
- 昇格(等級アップ):要件(評価・在級年数・役割)を決め、昇格時は現在の額の直近上位の号に乗せ替えます。
- 賃金規程との連動:賃金表は就業規則(賃金規程)の一部として位置づけ、改定手続きも定めておきます。
導入時の2大チェックポイント
- ① 最低賃金割れ。いちばん下のマス(1等級1号)を時給換算(基本給÷月平均所定労働時間)し、都道府県の最低賃金と比べます。例:初号20万円・月平均173.3時間なら時給約1,154円。最低賃金は毎年10月に上がるため、下位のマスは毎年チェックが必要です(→ 最低賃金とは)。
- ② 既存社員の乗せ替え。現在の基本給を表にプロットし、マスに合わない人は直近上位の号に乗せるのが原則です(引き下げは不利益変更になるため原則不可)。表を大きく上回る人は、差額を「調整給」として切り出し、昇給で吸収していく方法が現実的です。
実務でよくあるつまずき
- ピッチを小さくしすぎて昇給が見えない。年1号=1,000円だと10年で1万円。若手の定着を狙うなら、下位等級のピッチと昇給号数は思い切りが必要です。
- 原資の検証をしていない。全員が毎年1〜2号上がる前提で、5年後の人件費総額を必ず試算してください。
- 表だけ作って評価と接続していない。「何をすれば号が上がるのか」が示されないと、せっかくの表も納得感につながりません。
賃金表を無料で自動作成
等級・号俸・ピッチ・初号額・会社名を入力するだけで、賃金表(号俸表)がその場で完成し、PDFで保存できます。数字を変えて何パターンも比較するのに便利です。
あわせて読みたい: 平均給与の調べ方(相場の確認)/最低賃金とは
根拠・出典
- 賃金の決定・計算方法の就業規則への記載:労働基準法 第89条。
- 最低賃金との比較:最低賃金法(毎年10月頃改定)。
- 賃金の引き下げ(不利益変更):労働契約法 第9条・第10条。
よくある質問
賃金表(号俸表)はどうやって作りますか?
①等級(3〜6等級)→②号俸の数(20〜40号)→③ピッチ(1号あたりの昇給額)→④各等級の初号額、の順に決めます。各マスは「初号額+(号−1)×ピッチ」で自動的に決まります。
等級数・号俸数・ピッチの目安は?
中小企業なら3〜6等級・1等級あたり20〜40号が一般的です。ピッチは下位等級2,000円前後、上位ほど大きく(2,500〜3,000円など)する設計が主流です。
いまの社員の給与が表のマスに合わないときは?
原則として直近上位の号に乗せ替えます(引き下げは不利益変更になるため原則不可)。表を大きく上回る人は差額を調整給として切り出し、昇給で徐々に吸収します。
最低賃金はどう確認しますか?
いちばん下のマス(1等級1号)を「基本給÷月平均所定労働時間」で時給換算し、都道府県の最低賃金と比べます。最低賃金は毎年10月に改定されるため、毎年の再チェックが必要です。
賃金表は就業規則に載せる必要がありますか?
賃金の決定・計算方法は就業規則の絶対的必要記載事項です。賃金表そのものは賃金規程の別表として位置づけ、改定の手続きとあわせて定めておくのが一般的です。
本記事は2026年7月時点の情報をもとにした(2026年7月11日 大幅加筆)一般的な情報提供であり、個別の事案への適合性を保証するものではありません。法令は改正されることがあります。具体的なご対応は、酌井社労士事務所までお気軽にご相談ください。