退職時に会社がやることは、大きく ①役所へ提出する届出、②本人に渡す書類、③本人から返してもらうもの の3つに分けると整理しやすくなります。とくに届出は 期限が短いので、退職が決まったら早めに動きましょう。
① 役所へ提出する届出と期限
| 届出 | 提出先 | 期限 |
|---|---|---|
| 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届 | 年金事務所(または健保組合) | 退職日の翌日から5日以内 |
| 雇用保険 被保険者資格喪失届 | ハローワーク | 退職日の翌日から10日以内 |
| 雇用保険 離職証明書(離職票の元になる書類) | ハローワーク | 資格喪失届と同時(本人が交付を希望する場合は必須) |
健康保険証は退職時に回収し、資格喪失届に添えて返却します(マイナ保険証への移行後も、交付されている保険証は回収・返却が必要です)。
② 本人に渡す書類
- 離職票(離職票-1・離職票-2) … 失業給付の手続きに必要。ハローワークでの手続き後、会社経由で本人に渡します。本人が59歳以上の場合は希望の有無にかかわらず交付が必要
- 雇用保険被保険者証 … 次の会社で使うため本人へ返却
- 源泉徴収票 … 退職後1か月以内に交付。転職先の年末調整や確定申告で使う
- 健康保険資格喪失証明書(任意・国保や扶養加入で求められることが多い)
- 年金手帳・基礎年金番号通知書(会社が預かっている場合)
退職後の健康保険(任意継続/国民健康保険/家族の扶養)や年金の選び方は本人の判断ですが、会社が証明書をすぐ出せると本人の手続きがスムーズです。
③ 本人から返してもらうもの
- 健康保険証(扶養家族の分も含む)
- 社員証・入館カード・名刺
- 貸与品(PC・制服・鍵・社用携帯など)
- 通勤定期券(現物支給の場合)
退職後に関係する手続き
住民税の特別徴収(給与天引き)をしている場合は、退職の時期に応じて「一括徴収」または「普通徴収への切替(給与所得者異動届出書)」の手続きが必要です。退職日が1〜5月か6〜12月かで扱いが変わるため、市区町村の案内に沿って処理します。
離職理由で変わる:会社都合と自己都合の違い(早見表)
離職証明書に記載する離職理由は、退職者の失業保険に直結します。倒産・解雇・退職勧奨などによる退職は「会社都合」(雇用保険では特定受給資格者)として扱われ、自己都合より手厚くなります。
| 会社都合(特定受給資格者) | 自己都合(一般の離職者) | |
|---|---|---|
| 給付制限 | なし(7日間の待期のみ) | 待期7日+原則1か月の給付制限 |
| 所定給付日数 | 90〜330日(年齢・被保険者期間による) | 90〜150日 |
| 受給に必要な被保険者期間 | 離職前1年に通算6か月以上 | 離職前2年に通算12か月以上 |
| 国民健康保険料 | 軽減あり(前年の給与所得を30/100として計算) | 軽減なし |
もらえる金額と日数の目安は、失業保険 計算ツールで退職理由別に試算できます。国民健康保険料の軽減は、特定受給資格者・特定理由離職者が対象で、離職日の翌日から翌年度末までの保険料に適用されます。
ウィザードで会社の手続きを確認できます
「この退職者の離職票は必要?」「資格喪失の届出先は?」といった判断は、Yes/No形式で進められる 退職手続きガイド が便利です。会社の届出・本人の受取/返却物・退職後の健康保険と年金の選び方まで出し分けます。
退職手続き(会社側)チェックリスト
- □ 健康保険証を回収した(扶養家族分も)
- □ 社会保険の資格喪失届を5日以内に提出した
- □ 雇用保険の資格喪失届・離職証明書を10日以内に提出した
- □ 離職票・雇用保険被保険者証を本人に渡した
- □ 源泉徴収票を退職後1か月以内に交付した
- □ 住民税(特別徴収)の異動手続きをした
- □ 貸与品・社員証などを返却してもらった
実務でよくあるつまずき
- 離職理由を安易に「自己都合」にする。退職勧奨に応じた退職を自己都合として届け出ると、本人がハローワークで異議を申し立て、トラブルに発展します。離職理由は事実どおりに記載してください。最終的な判定はハローワークが行います。
- 離職票の発行が遅れる。資格喪失届と離職証明書の提出が遅れると、本人の失業保険の手続きが丸ごと止まります。期限は退職日の翌日から10日以内。本人から催促されてから動くのではなく、退職日が決まった時点で賃金台帳や出勤簿など添付書類の準備を始めるとスムーズです。
- 助成金への影響を見落とす。会社都合の離職者を出すと、キャリアアップ助成金など一部の助成金が一定期間受給できなくなることがあります。申請予定の助成金がある場合は要件を先に確認してください。だからといって、離職理由を事実と変えて届け出るのは厳禁です。
根拠・出典
- 社会保険の資格喪失届(5日以内):健康保険法施行規則 第29条、厚生年金保険法施行規則 第22条。
- 雇用保険の資格喪失届・離職証明書(10日以内):雇用保険法施行規則 第7条。
- 特定受給資格者(会社都合退職)の所定給付日数・範囲:雇用保険法 第23条、厚生労働省「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」。
- 源泉徴収票の交付(退職後1か月以内):所得税法 第226条。
よくある質問
離職票はいつまでに発行すればよいですか?
会社は退職日の翌日から10日以内にハローワークへ離職証明書を提出します。本人の手元に離職票が届くのは、その後の処理を経て退職から2週間程度が目安です。離職票が届かないときの対処法はこちら。
本人が「離職票は不要」と言えば発行しなくてよいですか?
原則、本人が希望すれば発行義務があります。ただし退職時に不要と言われても、後から必要になるケースが多いため、発行しておくと安全です。59歳以上の人は希望にかかわらず交付が必要です。
会社都合退職と自己都合退職では何が違いますか?
失業保険の扱いが大きく変わります。会社都合(特定受給資格者)は給付制限がなく、7日間の待期だけで支給の対象になり、所定給付日数も90〜330日と手厚くなります。自己都合は待期7日に加えて原則1か月の給付制限があり、給付日数は90〜150日です。
退職者の離職理由は誰が決めるのですか?
まず会社が離職証明書に離職理由を記載し、本人が異議の有無を記入します。最終的にどの区分になるかは、双方の主張と資料をもとにハローワークが判定します。会社の記載がそのまま確定するわけではありません。
会社都合退職にすると会社に不利益はありますか?
雇用関係の助成金の中には、会社都合の離職者を出すと一定期間受給できなくなるものがあります。ただし、実際は会社都合なのに自己都合として処理すると、本人との深刻なトラブルにつながります。事実どおりに記載するのが原則です。
本記事は2026年7月時点の情報をもとにした(2026年7月12日 大幅加筆)一般的な情報提供であり、個別事案への適合性を保証するものではありません。具体的なご相談は 酌井社労士事務所 へどうぞ。