毎月の給与から引かれる社会保険料(健康保険・厚生年金・介護保険)は、その月の給料そのものに料率をかけて計算するのではなく、「標準報酬月額」というあらかじめ区切られた金額(等級)を使って計算します。事務処理を簡単にするためのしくみです。
標準報酬月額とは?
標準報酬月額とは、実際の給与(報酬月額)を、保険料計算用の等級表にあてはめて決めた金額のことです。たとえば報酬月額が29万円〜31万円の人は、標準報酬月額「30万円」の等級として扱われます。
この標準報酬月額に保険料率をかけ、会社と本人で折半した額が、毎月の給料から引かれます。料率は都道府県・年度で変わります(協会けんぽの場合)。手取りへの影響は 手取りの計算方法 もあわせてご覧ください。
等級は何段階ある?(健康保険50・厚生年金32)
標準報酬月額の等級は、保険ごとに上限・下限が異なります。
| 保険 | 等級数 | 下限〜上限 |
|---|---|---|
| 健康保険・介護保険 | 50等級 | 58,000円 〜 1,390,000円 |
| 厚生年金保険 | 32等級 | 88,000円 〜 650,000円 |
厚生年金は上限が650,000円のため、高収入でも保険料・将来の年金額はこの上限で頭打ちになります。
等級表の抜粋(報酬月額→標準報酬月額)
等級表は「報酬月額がこの範囲なら、標準報酬月額はこの金額」という対応表です。月給30万円前後の範囲を抜粋すると、次のようになります。
| 報酬月額の範囲 | 標準報酬月額 | 健保の等級 | 厚年の等級 |
|---|---|---|---|
| 250,000円以上 270,000円未満 | 260,000円 | 20等級 | 17等級 |
| 270,000円以上 290,000円未満 | 280,000円 | 21等級 | 18等級 |
| 290,000円以上 310,000円未満 | 300,000円 | 22等級 | 19等級 |
| 310,000円以上 330,000円未満 | 320,000円 | 23等級 | 20等級 |
| 330,000円以上 350,000円未満 | 340,000円 | 24等級 | 21等級 |
全等級の一覧は、協会けんぽの「都道府県ごとの保険料額表」や日本年金機構の保険料額表で確認できます。同じ範囲内なら、月給が数千円違っても保険料は変わりません。
報酬月額に含むもの・含まないもの
等級のもとになる「報酬月額」には、労働の対償として毎月受け取るものを幅広く含めます。
- 含む:基本給、通勤手当、残業手当、役職手当、住宅手当、家族手当 などの諸手当、現物給与(社宅・食事など)
- 含まない:賞与(年3回以下のもの)、結婚祝金などの臨時的なもの、出張旅費の実費
賞与は標準報酬月額には含めず、「標準賞与額」として別に社会保険料がかかります(賞与額から1,000円未満を切り捨てた額に料率をかける)。
標準報酬月額はいつ決まる・いつ変わる?
① 資格取得時決定(入社時)
入社して社会保険に加入するとき、見込みの報酬額をもとに決定します。入社手続きの流れは 入社手続きの必要書類 をご覧ください。
② 定時決定(毎年1回・算定基礎届)
毎年1回、4月・5月・6月に支払った報酬の平均をもとに見直します。会社は7月10日までに「算定基礎届」を提出し、決まった標準報酬月額はその年の9月から翌年8月までの保険料に使われます。
数字で確かめてみましょう。4月302,000円・5月298,000円・6月306,000円が支払われた人の場合、3か月の合計906,000円を3で割った報酬月額は302,000円。上の等級表の「290,000円以上310,000円未満」にあてはまり、標準報酬月額は300,000円(健保22等級・厚年19等級)に決まります。厚生年金保険料は全国一律18.3%なので、300,000円×18.3%=54,900円。労使折半で本人負担は月27,450円です。健康保険料は、これに都道府県ごとの料率(10%前後)を掛けて折半します。
③ 随時改定(月額変更届)
昇給・降給など固定的賃金が変わり、変動後3か月の報酬の平均が従前より2等級以上変わったときは、定時決定を待たずに改定します(月額変更届)。
たとえば従前の標準報酬月額が260,000円(健保20等級)の人が、10月に基本給を26万円から29万円に昇給し、10〜12月の報酬平均が302,000円になったとします。新しい等級は300,000円(健保22等級)で従前と2等級差。要件を満たすため、変動月から数えて4か月目の翌年1月から標準報酬月額が300,000円に改定されます。
このほか、育児休業等の終了時に報酬が下がった場合の特例(育児休業等終了時改定)などもあります。
実務でよくあるつまずき
- 4〜6月の残業で保険料が上がる。定時決定は残業代込みの報酬で計算するため、この3か月に残業が集中すると、9月からの保険料が実態より高くなります。毎年4〜6月が繁忙期にあたる場合は、年間平均で決める「保険者算定」を申し立てられる例外があります。
- 残業代が増えただけでは随時改定にならない。随時改定の起点はあくまで基本給・手当などの固定的賃金の変動です。逆に、昇給しても3か月平均で2等級差がつかなければ、次の定時決定まで保険料は変わりません。
- 6か月分の通勤定期をそのまま算入してしまう。通勤手当を6か月分まとめて支給している場合は、支給月に全額を入れるのではなく、1か月あたりに割った額を毎月の報酬に含めて計算します。
自分の社会保険料・手取りを確かめるには
標準報酬月額をもとにした社会保険料や、税金まで引いた手取り額は、総支給額を入れるだけで自動計算できる無料ツールで確認できます。標準報酬月額の等級も自動で当てはめて計算します。健康保険・厚生年金・雇用保険の内訳や会社負担分まで見たい方は 社会保険料 計算ツール が便利です。
ちなみに、世間の月給の水準は 平均給与を調べるツール(賃金センサス令和7年対応)で業種・年齢・都道府県別に確認できます。
根拠・出典
- 標準報酬月額の等級(健康保険・50等級):健康保険法 第40条。
- 定時決定:健康保険法 第41条/厚生年金保険法 第21条。
- 資格取得時決定:健康保険法 第42条/厚生年金保険法 第22条。
- 随時改定:健康保険法 第43条/厚生年金保険法 第23条。
- 厚生年金の標準報酬月額(32等級):厚生年金保険法 第20条。
- 保険料額表:全国健康保険協会(協会けんぽ)「都道府県ごとの保険料額表」、日本年金機構「厚生年金保険料額表」。
よくある質問
標準報酬月額はいつ決まりますか?
入社時の資格取得時決定、毎年1回の定時決定(4〜6月の報酬の平均で決め、その年の9月から翌年8月の保険料に適用)、固定的賃金が変わったときの随時改定の3つの場面で決まります。
標準報酬月額に通勤手当や残業代は含まれますか?
含まれます。基本給のほか、通勤手当・残業手当・役職手当など、労働の対償として毎月受け取る報酬を合計します。ただし賞与は含めず、賞与は標準賞与額として別に扱います。
標準報酬月額が上がると損ですか?
保険料は上がりますが、将来の年金額や、傷病手当金・出産手当金などの給付額も標準報酬月額をもとに計算されるため、給付が手厚くなる面もあります。
4〜6月に残業が多いと社会保険料は上がりますか?
上がる可能性があります。定時決定は4〜6月に支払われた報酬(残業代込み)の平均で決めるためです。ただし、毎年4〜6月が繁忙期で年間平均と大きく差が出る場合は、年間平均で決める保険者算定を申し立てられる例外があります。
随時改定(月額変更届)はどんなときに行われますか?
昇給・降給や手当の新設・廃止など固定的賃金が変わり、変動月からの3か月の報酬平均が従前の標準報酬月額と2等級以上差になったときです。3か月とも支払基礎日数17日以上であることも要件で、変動月から数えて4か月目に改定されます。
本記事は2026年7月時点の情報をもとにした(2026年7月12日 大幅加筆)一般的な情報提供であり、個別事案への適合性を保証するものではありません。社会保険の取扱いは改定されることがあります。具体的なご相談は 酌井社労士事務所 へどうぞ。