入社手続きで必要な書類は、大きく ①会社が本人から集めるもの、②本人に渡すもの、③会社が役所へ提出するもの の3つに分けて考えると整理しやすくなります。本記事ではこの3つに沿って、必要書類をチェックリスト形式でまとめます。
① 本人から提出してもらう書類
入社する本人に準備・提出してもらう書類です。社会保険・雇用保険・税金の手続きに使うため、入社初日までにそろえてもらうとスムーズです。
| 書類 | 主な用途 | 備考 |
|---|---|---|
| マイナンバー(個人番号) | 社会保険・雇用保険・税の届出 | 本人+扶養家族の分。番号確認書類で確認 |
| 基礎年金番号がわかるもの | 厚生年金の加入手続き | 年金手帳・基礎年金番号通知書など |
| 雇用保険被保険者証 | 雇用保険の加入手続き | 前職がある人のみ。番号を引き継ぐ |
| 給与所得者の扶養控除等申告書 | 所得税(源泉徴収) | 入社時に記入してもらう |
| 前職の源泉徴収票 | 年末調整 | 同年内に前職がある人のみ |
| 給与振込先の口座情報 | 給与の支払い | 通帳コピー等 |
| 扶養家族の情報・続柄がわかる書類 | 健康保険の被扶養者手続き | 扶養に入れる家族がいる場合 |
会社によっては、年金手帳・健康診断書・住民票記載事項証明書・身元保証書・誓約書などを追加で求めることもあります。何を集めるかは自社の運用に合わせて決めましょう(マイナンバーは利用目的の明示・厳重管理が必要です)。
② 会社が本人に渡す書類
採用が決まったら、会社から本人へ交付する書類です。とくに 労働条件の明示は法律上の義務 です。
- 労働条件通知書(兼 雇用契約書) … 労働基準法で交付が義務。給与・労働時間・休日などを明示します。必須の記載事項はこちら
- 雇用契約書(合意の証拠を残す書面。通知書と兼ねる形が一般的)
- 就業規則(10人以上の事業場は必須。作成・周知の義務)
- 各種社内規程・誓約書・身元保証書(必要に応じて)
労働条件通知書は 働き始める前〜入社時まで に渡すのが原則です。当事務所の無料ツールなら、明示すべき項目があらかじめ入った「兼用書面」をすぐ作成できます。
③ 会社が役所へ提出する届出と期限
社会保険・雇用保険の加入手続きです。期限が短いため、入社が決まったら早めに準備しましょう。
| 届出 | 提出先 | 期限 |
|---|---|---|
| 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届 | 年金事務所(または健保組合) | 入社日から5日以内 |
| 被扶養者(異動)届 | 年金事務所(または健保組合) | 扶養家族がいる場合、資格取得届と同時 |
| 雇用保険 被保険者資格取得届 | ハローワーク | 入社日の翌月10日まで |
| 住民税 特別徴収への切替届出書 | 従業員が住む市区町村 | 締切は市区町村ごとに異なる。天引きを始めたい月の前月中を目安に提出 |
それぞれ 加入の条件(労働時間・日数・見込み期間など) を満たすかどうかの判定が必要です。週20時間・月額88,000円・2か月超の見込みといった要件は、雇用形態や働き方によって変わります。
住民税は補足です。中途入社の人が前職で給与天引き(特別徴収)だった場合、前職からの「異動届出書」で普通徴収に切り替わっていることが多いため、本人が天引きを希望するなら会社から市区町村へ切替届出書を提出します。新卒など前年の所得がない人は、翌年6月から天引きが始まるので入社時の手続きは不要です。
加入条件はツールで判定できます
「このパートさんは社会保険に入れる?」「雇用保険はどこから?」といった判定は、Yes/No形式で進められる 入社手続きガイド が便利です。会社の届出・本人の準備物も自動で出し分けます。
入社手続き 必要書類チェックリスト
- □ 労働条件通知書(兼 雇用契約書)を作成・交付した
- □ マイナンバー・基礎年金番号・雇用保険被保険者証を回収した
- □ 扶養控除等申告書を記入してもらった
- □ 給与振込口座・前職の源泉徴収票を確認した
- □ 社会保険の資格取得届を5日以内に提出した
- □ 雇用保険の資格取得届を翌月10日までに提出した
- □ 扶養家族がいる場合、被扶養者届を提出した
- □ 住民税の天引きを希望する場合、特別徴収への切替届出書を提出した
実務でよくあるつまずき
- 前職の源泉徴収票の回収漏れ。入社時に確認せず、年末調整の時期(11〜12月)になって「もらっていない」と発覚するパターンが典型です。その年に前職の給与がある人は、入社時の回収リストに源泉徴収票を必ず入れてください。どうしてもそろわなければ、その人の年末調整は行わず本人の確定申告に切り替えます。
- 雇用保険被保険者番号がわからない。被保険者証を紛失している人は珍しくありません。番号が不明でも、前職の会社名と在籍期間を聞いておけばハローワークで確認できます。番号探しに時間をかけて翌月10日の期限を落とすのが一番の失敗です。
- 扶養家族の手続き漏れ。本人の資格取得届だけ出して被扶養者(異動)届を忘れると、家族は健康保険に入れないままです。医療機関でいったん全額自己負担になるなど本人の不利益が大きいので、入社時のヒアリングで扶養に入れたい家族の有無を必ず確認してください。家族の収入を確認する書類(所得証明など)を求められることもあります。
根拠・出典
- 健康保険・厚生年金の資格取得届(入社日から5日以内):健康保険法施行規則 第24条、厚生年金保険法施行規則 第15条。
- 雇用保険の資格取得届(翌月10日まで):雇用保険法施行規則 第6条。
- 労働条件の明示義務:労働基準法 第15条、労働基準法施行規則 第5条。
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書:所得税法 第194条。
よくある質問
入社書類は入社日より前に集めてよいですか?
はい。マイナンバーや口座情報などは、内定後〜入社日までに集めておくと、資格取得届の期限(社保は5日以内)に間に合わせやすくなります。
パート・アルバイトでも社会保険・雇用保険は必要ですか?
労働時間・日数などの条件を満たせば加入が必要です。条件は 扶養の条件 や働き方によって変わるため、入社手続きガイドで判定するのが確実です。パート特有の労働条件の明示は こちらのコラム も参考にしてください。
社会保険の資格取得届が5日以内に間に合わなかったらどうなりますか?
期限を過ぎても届出は受理されるので、気づいた時点ですぐ提出してください。加入日(資格取得日)は実際の入社日にさかのぼります。遅れが大きい場合は、賃金台帳や出勤簿など事実を確認できる書類の添付を求められることがあります。
前職の源泉徴収票を提出してもらえないときはどうすればよいですか?
まず本人から前職へ再発行を依頼してもらいます。源泉徴収票の交付は退職後1か月以内が会社の義務です(所得税法226条)。年末調整までにそろわない場合は、その従業員の年末調整は行わず、本人に確定申告をしてもらう扱いになります。
雇用保険被保険者番号がわからない場合はどうすればよいですか?
被保険者証がなくても手続きできます。前職の会社名と在籍期間がわかれば、資格取得届の備考欄に記載するなどの方法でハローワークが番号を確認してくれます。本人がハローワークで被保険者証の再発行を受けることも可能です。
本記事は2026年7月時点の情報をもとにした(2026年7月12日 大幅加筆)一般的な情報提供であり、個別事案への適合性を保証するものではありません。法令は改正されることがあります。具体的なご相談は 酌井社労士事務所 へどうぞ。