「年収の壁」と呼ばれるラインはいくつもあり、税金の話と社会保険の話が混ざって分かりにくくなっています。影響の大きさで言えば、本命は社会保険の壁(106万円・130万円)。しかも2026年は、106万円の壁の撤廃(10月予定)や所得税の壁の引き上げなど、壁の位置が大きく動いている最中です。全体マップ→各壁の中身→損しない考え方、の順に整理します。
年収の壁の全体マップ(2026年時点)
| 壁 | 種類 | 何が起きる? | 影響 |
|---|---|---|---|
| 100万円前後 | 税金 | 住民税がかかり始める(自治体により93〜100万円) | 小(年数千円〜) |
| 106万円 | 社会保険 | 条件を満たすパート本人が勤務先の社会保険に加入。賃金要件は2026年10月に撤廃予定 | 大(年約15〜16万円) |
| 130万円 | 社会保険 | 家族の健康保険の扶養から外れる(60歳以上等は180万円・19〜23歳未満は150万円) | 大(年約20〜30万円) |
| 160万円 | 税金 | 本人に所得税がかかり始める(令和7・8年分の特例を含むライン。いわゆる「103万円の壁」の後継) | 小〜中 |
| 約201万円 | 税金 | 配偶者特別控除がゼロになる(160万円から段階的に縮小) | 小〜中 |
このほか、会社独自の配偶者手当・家族手当の支給基準(103万円・130万円など)が「第4の壁」になることがあります。勤務先の規定も確認してください。
106万円の壁(本人が社会保険に加入)
次の条件をすべて満たすパート等は、勤務先の社会保険(健康保険・厚生年金)に本人が加入します。
- 勤務先の厚生年金の被保険者が常時51人以上(2024年10月〜)
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 所定内賃金が月額8.8万円以上(年収換算 約106万円)
- 2か月を超える雇用の見込みがある/学生でない
ここが2026年の最大の変更点です。2025年成立の年金制度改正により、月額8.8万円の賃金要件は2026年10月に撤廃される予定。撤廃後は、対象企業で週20時間以上働けば金額に関係なく加入します。つまり「106万円の壁」は「週20時間の壁」に変わっていきます。企業規模要件(51人以上)も2027年10月から段階的に縮小される予定です。
130万円の壁(家族の扶養に入れるか)
106万円の要件に当てはまらない人でも、年収(今後1年の見込み)が130万円以上になると家族の健康保険の扶養から外れ、自分で保険に入ることになります。勤務先で入れなければ国民健康保険+国民年金で年20万〜30万円程度の負担です。くわしくは 130万円の壁とは をご覧ください。
税金の壁は「160万円」に変わった
長く「103万円の壁」と呼ばれてきた所得税のラインは、令和7年度税制改正で基礎控除と給与所得控除が引き上げられ、年収160万円(令和7・8年分の特例適用時)まで所得税がかからなくなりました。配偶者特別控除も年収160万円までは満額(38万円)です。税の壁は超えても「超えた分に数%」の世界で、社会保険の壁のような手取りの急落は起きません。
損しない考え方(働き損ゾーンと回復ライン)
社会保険の壁を少しだけ超えると、保険料負担で手取りが壁の手前より減る「働き損」ゾーンに入ります。回復ラインの目安は、106万円の壁で約125万円、130万円の壁で約150〜160万円。中途半端に超えるのが一番損で、超えるならしっかり超えるのが鉄則です。なお社会保険に入ると、将来の厚生年金が増え、傷病手当金・出産手当金の保障も付きます。目先の手取りだけでなく保障もあわせて判断してください。
🛠 あなたと配偶者の年収を入れるだけで、壁までの余裕・世帯手取りのグラフ・働き損ゾーンを確認できる 年収の壁シミュレーター(無料)を公開しています。2026年10月以降の制度への切り替え表示にも対応しています。
実務でよくある勘違い
- 「103万円に抑えたのに損した」。今は所得税の壁は160万円です。古い記憶のまま働き控えをすると、単にもらい損ねるだけになります。
- 通勤手当の数え方の混同。社会保険の130万円判定では通勤手当を含み、税金の計算では原則含みません。制度ごとに収入の数え方が違います。
- 会社の配偶者手当を忘れていた。「130万円までOK」と思って働いたら、勤務先の配偶者手当(基準103万円)が打ち切られて逆転──という相談は珍しくありません。
自分の場合はどうなる?
扶養に入れるかどうかの判定は扶養判定ツール、世帯の手取りへの影響は年収の壁シミュレーターで、その場で確認できます。
根拠・出典
- 短時間労働者の社会保険適用(106万円の壁)・賃金要件の撤廃(2026年10月予定):厚生労働省、2025年成立の年金制度改正法。
- 被扶養者の収入基準(130万円/180万円/19〜23歳未満150万円):健康保険法、日本年金機構・協会けんぽの認定基準。
- 基礎控除・給与所得控除の引き上げ(160万円の壁):令和7年度税制改正、国税庁。
よくある質問
106万円の壁と130万円の壁は何が違うのですか?
106万円は条件を満たすパート本人が勤務先の社会保険に加入するライン、130万円は家族の扶養から外れるラインです。加入先も保険料の負担のしかたも異なります。
106万円の壁はなくなるのですか?
賃金要件(月8.8万円)は2026年10月に撤廃予定です。撤廃後は、対象企業で週20時間以上働くと金額に関係なく社会保険に加入します。「金額の壁」から「週20時間の壁」に変わるイメージです。
103万円の壁はまだありますか?
所得税のラインとしては、令和7年度税制改正で実質160万円(令和7・8年分の特例適用時)に引き上げられました。ただし会社の配偶者手当の支給基準に103万円が残っている場合があります。
いくらまで働くのが得ですか?
社会保険の壁の手前に抑えるか、超えるなら回復ライン(106万円の壁なら約125万円、130万円の壁なら約150〜160万円)以上までしっかり働くのが損しない考え方です。シミュレーターで自分の条件の分岐点を確認できます。
社会保険に入るのは損ですか?
目先の手取りは減りますが、厚生年金で将来の年金が増え、傷病手当金・出産手当金などの保障も付きます。長期的にはメリットも大きく、一概に損とはいえません。
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本記事は2026年7月時点の情報をもとにした(2026年7月11日 大幅加筆)一般的な情報提供であり、個別の事案への適合性を保証するものではありません。法令・制度は改正されることがあります。社会保険の扶養の最終的な認定は、加入している健康保険組合・協会けんぽが行います。具体的なご対応は、酌井社労士事務所までお気軽にご相談ください。