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割増賃金とは|計算の基礎になる賃金と除外できる手当

残業代の計算の基礎になる賃金と、除外できる手当(家族手当・通勤手当など)を整理します。

残業代(割増賃金)の計算で、いちばん間違いが多いのは割増率ではありません。「どの賃金を基礎に入れるか」です。除外できない手当を勝手に除外していると、1時間あたりの単価が安くなり、気づかないうちに未払い残業代が積み上がります。この記事では、基礎に入れる賃金・除外できる7つの手当・具体的な計算例を、給与計算の実務目線で整理します。

割増賃金とは|3つの種類と割増率

割増賃金は、時間外・深夜・法定休日に働かせたときに、通常の賃金に上乗せして支払う賃金です。計算式は次の1本だけです。

割増賃金 = 1時間あたりの基礎賃金 × 割増率 × 時間数

種類割増率(法律上の下限)
時間外労働(1日8時間・週40時間超)25%以上
時間外労働のうち月60時間を超えた部分50%以上(2023年4月から中小企業も対象)
深夜労働(22時〜翌5時)+25%以上(他の割増に上乗せ)
法定休日労働(週1日の休日)35%以上

深夜は「上乗せ」なので、時間外+深夜なら25%+25%=50%、法定休日+深夜なら35%+25%=60%になります。割増率の詳しい使い分けは 残業代の計算方法 をご覧ください。

計算の基礎になる賃金|原則は「全部入れる」

1時間あたりの基礎賃金は、「基礎賃金 ÷ 1か月の平均所定労働時間」で求めます。ここでいう基礎賃金は、所定労働時間の労働に対して支払う賃金のほぼすべてです。基本給だけではありません。役職手当・資格手当・精勤手当・業務手当・地域手当なども、原則として基礎に含めます。

「基本給だけで残業単価を計算していた」という給与計算は、手当の分だけ単価が安くなっているため、未払いが発生しています。実務の相談でも、このパターンがいちばん多いと感じます。

基礎から除外できるのは7つだけ

例外として除外できる賃金は、法律(労働基準法施行規則)で7つに限定されています。これ以外は名前が何であれ除外できません。

除外できる賃金除外できる条件(実態)除外できない例
家族手当扶養家族の人数に応じて支給している家族の有無・人数に関係なく一律2万円
通勤手当通勤距離・実費に応じて支給している距離に関係なく一律1万円
別居手当単身赴任など別居の実態に応じて支給
子女教育手当子どもの就学の実態に応じて支給
住宅手当家賃・ローン額に応じて支給している住宅の状況に関係なく一律1.5万円
臨時に支払われた賃金結婚祝金・見舞金など臨時のもの
1か月を超える期間ごとの賃金賞与、年2回の精勤手当など賞与を12分割して毎月払うもの

判断のポイントは「名称ではなく実態」です。「住宅手当」という名前でも、全員に一律で払っていれば実態は基本給の一部と同じ。除外できず、基礎に入れて計算しなければなりません。

計算例:手当の扱いで残業単価はこう変わる

月給30万円・月の平均所定労働時間160時間の人で比べます。内訳は、基本給26万円+役職手当2万円+家族手当1万円(子の人数に応じて支給)+通勤手当1万円(実費)とします。

基礎賃金26万円+2万円=28万円(家族手当・通勤手当は実態要件を満たすため除外)
1時間あたりの基礎賃金28万円 ÷ 160時間 = 1,750円
時間外の単価(×1.25)2,187.5円
月20時間残業した場合2,187.5円 × 20時間 = 43,750円

もし役職手当2万円を基礎から漏らして「基本給26万円だけ」で計算すると、単価は1,625円×1.25=2,031.25円。月20時間の残業で毎月3,125円、年間で約3.7万円の未払いが発生します。1人あたりこの金額でも、従業員10人×時効3年分なら100万円を超える規模になります。

実務でよくある間違い3つ

給与計算の相談を受けていて、実際によく見かけるパターンです。

  • 一律支給の住宅手当・家族手当を除外している。7つの除外賃金の名前だけ見て運用しているケースです。一律支給なら基礎に入れる必要があります。就業規則・賃金規程の支給基準を確認してください。
  • 歩合給・インセンティブを基礎に入れていない。歩合給にも割増賃金はかかります(計算方法は固定給と異なり、歩合部分は「歩合給 ÷ その月の総労働時間 × 0.25 × 残業時間」)。営業職で漏れがちです。
  • 賞与を月割りにして「賞与だから除外」としている。毎月固定額で払っていれば、それは賞与ではなく月例賃金です。除外できません。

間違えていたときのリスク

基礎賃金の誤りは、そのまま未払い残業代になります。残業代の請求時効は当面3年(本来は5年に向けて経過措置中)で、過去にさかのぼって精算が必要です。労働基準監督署の調査で指摘されるほか、裁判になれば未払額と同額までの付加金の支払いを命じられることもあります。「単価の計算方法を一度も見直したことがない」という会社は、まず現在の計算式の確認をおすすめします。

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根拠・出典

  • 割増賃金・割増率:労働基準法 第37条。
  • 基礎から除外できる賃金(限定列挙):労働基準法施行規則 第21条。
  • 月60時間超の50%の中小企業への適用:2023年(令和5年)4月1日〜。
  • 付加金:労働基準法 第114条。

よくある質問

割増賃金の計算式は?

1時間あたりの基礎賃金 × 割増率 × 時間数 で計算します。時間外は25%以上(月60時間超の部分は50%以上)、深夜は+25%以上、法定休日は35%以上です。

割増賃金の計算基礎から除外できる手当は?

家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時に支払われた賃金・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)の7つだけです。法律で限定列挙されており、これ以外の手当(役職手当・資格手当など)は除外できません。

家族手当は必ず除外できますか?

いいえ。名前が家族手当でも、家族の人数に関係なく一律支給している場合は除外できません。名称ではなく実態で判断されます。住宅手当・通勤手当も同じ考え方です。

歩合給やインセンティブにも残業代はかかりますか?

かかります。歩合給も割増賃金の基礎に含まれます。計算方法は固定給と異なり、歩合部分については「歩合給 ÷ その月の総労働時間 × 0.25 × 残業時間」で上乗せ分を計算します。

月60時間超の割増率50%は中小企業も対象ですか?

対象です。2023年(令和5年)4月から中小企業にも適用されています。月60時間を超える時間外労働には50%以上の割増率が必要です。

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本記事は2026年7月時点の情報をもとにした一般的な情報提供であり(2026年7月11日 大幅加筆)、個別の事案への適合性を保証するものではありません。法令は改正されることがあります。具体的なご対応は、酌井社労士事務所までお気軽にご相談ください。