残業代(割増賃金)は、「1時間あたりの単価 × 割増率 × 残業時間」——式はこれ1本です。難しく見えるのは、単価の出し方と割増率の使い分けに細かいルールがあるから。この記事では、計算を4つのステップに分けて、複合ケース(残業が深夜に食い込んだ場合など)まで計算例で解説します。
計算の全体像(4ステップ)
- 基礎賃金を確定する:月給から、除外できる手当(家族手当・通勤手当など7種)を引く。
- 1時間あたりの単価を出す:基礎賃金 ÷ 1か月平均所定労働時間。
- 割増率を当てはめる:時間外1.25/月60時間超1.50/深夜+0.25/法定休日1.35。
- 残業時間を掛ける:種類ごとに計算して合計する。
ステップ1・2:1時間あたりの単価
1時間あたり単価 = 基礎賃金 ÷ 1か月平均所定労働時間
基礎賃金には基本給のほか役職手当・資格手当なども含みます。除外できるのは家族手当・通勤手当・住宅手当など法律で限定された7つだけです(→ 割増賃金とは|除外できる手当)。
1か月平均所定労働時間は「(365 − 年間休日)× 1日の所定労働時間 ÷ 12」。年間休日105日・1日8時間なら(365−105)×8÷12=約173.3時間です。
ステップ3:割増率の一覧
| 残業の種類 | 割増率 | 単価の倍率 |
|---|---|---|
| 法定内残業(所定7時間の会社で8時間まで働くなど) | 割増不要 | ×1.00 |
| 時間外労働(1日8時間・週40時間超) | 25%以上 | ×1.25 |
| 時間外労働の月60時間超部分 | 50%以上 | ×1.50 |
| 時間外+深夜(22時〜翌5時) | 25%+25% | ×1.50 |
| 法定休日 | 35%以上 | ×1.35 |
| 法定休日+深夜 | 35%+25% | ×1.60 |
「法定内残業」に注意。所定労働時間が7時間の会社で7〜8時間目に働いた分は、法定の8時間以内なので割増は不要(通常の時給×1.00で支払い)です。ここを1.25で払うか1.00で払うかは就業規則の定めによります。
ステップ4:計算例
基本の例(時間外10時間)
基礎賃金26万円・月平均所定173.3時間の場合:単価は260,000÷173.3=約1,500円。時間外10時間なら、1,500×1.25×10時間=18,750円です。
複合の例(残業が深夜に食い込んだ)
同じ人が、ある日21時から24時まで3時間残業した場合(所定終業18時・すべて時間外):
- 21時〜22時(時間外のみ):1,500 × 1.25 × 1時間 = 1,875円
- 22時〜24時(時間外+深夜):1,500 × 1.50 × 2時間 = 4,500円
- 合計 = 6,375円
月60時間を超えた例
月の時間外が70時間なら、60時間までは×1.25、61〜70時間の10時間は×1.50で計算します(2023年4月から中小企業も適用)。
端数処理と「1分単位」の原則
労働時間は1分単位で集計するのが原則です。「15分未満切り捨て」のような日々の切り捨ては認められません。認められる端数処理は、①1か月の残業時間の合計の30分未満切り捨て・30分以上切り上げ、②1時間あたり単価や1か月の割増賃金額の50銭未満切り捨て・50銭以上切り上げ、などに限られます。
実務でよくある間違い
- 日々15分単位で切り捨てている。1日15分×20日=月5時間分の未払いになります。タイムカードの丸め設定を確認してください(→ 勤怠集計ツール)。
- 基礎賃金から役職手当などを漏らしている。単価が安くなり未払いの原因になります。除外できる手当は7つだけです。
- 所定休日と法定休日を区別していない。週休2日の土曜(所定休日)の労働は35%ではなく、週40時間超なら25%の時間外扱いです。就業規則でどちらを法定休日にするか定めておくと計算が明確になります。
単価・残業代をすぐ計算
月給と残業時間を入れるだけで、時間外・深夜・休日ごとの割増賃金を自動計算します。
あわせて読みたい: 定額残業代とは/変形労働時間制の残業代/36協定とは
根拠・出典
- 割増賃金・割増率:労働基準法 第37条、割増賃金令。
- 基礎から除外できる賃金:労働基準法施行規則 第21条。
- 端数処理の取扱い:行政通達(昭和63年3月14日 基発第150号)。
- 月60時間超50%の中小企業適用:2023年(令和5年)4月1日〜。
よくある質問
残業代の割増率は何パーセントですか?
時間外労働は25%以上、月60時間を超える部分は50%以上、深夜(22〜5時)は+25%、法定休日は35%以上です。時間外+深夜は50%、休日+深夜は60%になります。
残業代の1時間あたり単価はどう出しますか?
基礎賃金(除外手当を引いた月給)÷ 1か月平均所定労働時間で求めます。月平均所定は(365−年間休日)×1日の所定時間÷12。年間休日105日・8時間なら約173.3時間です。
残業時間は15分単位で切り捨ててよいですか?
いけません。労働時間は1分単位が原則です。認められるのは、1か月合計の30分未満切り捨て・30分以上切り上げなど、限られた端数処理だけです。
所定労働時間が7時間の会社で8時間働いたら割増は必要ですか?
7〜8時間目は法定の8時間以内なので、法律上の割増(25%)は不要です(通常の時給での支払いは必要)。8時間を超えた分から割増が必要になります。
月60時間超の割増率50%は中小企業にも適用されますか?
されます。2023年(令和5年)4月から中小企業にも適用されています。60時間までは25%以上、超えた部分は50%以上で計算します。
本記事は2026年7月時点の情報をもとにした(2026年7月11日 大幅加筆)一般的な情報提供であり、個別の事案への適合性を保証するものではありません。法令は改正されることがあります。具体的なご対応は、酌井社労士事務所までお気軽にご相談ください。