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変形労働時間制でも残業代は出る|割増賃金が発生するケース

「変形にすれば残業代不要」は誤解です。残業代が発生するしくみと、判定の3段階を整理します。

「変形労働時間制にすれば残業代を払わなくてよい」——これは実務で最も多い誤解のひとつです。変形労働時間制は、忙しい時期の「8時間超え」をあらかじめ計画に組み込める制度であって、残業代が消える制度ではありません。計画を超えて働かせれば、通常どおり割増賃金が必要です。判定のしかたを、計算例つきで整理します。

残業の判定は「1日→1週→期間」の3段階

変形労働時間制の残業時間は、次の順番で数えます。二重にカウントしないよう、先に数えた分は除きます。

段階残業になる時間
① 1日単位8時間(8時間超の所定を定めた日はその時間)を超えた分
② 1週単位40時間(40時間超の所定を定めた週はその時間)を超えた分(①を除く)
③ 対象期間単位期間の法定総枠=40時間 × 暦日数 ÷ 7 を超えた分(①②を除く)

③の「法定総枠」は暦日数で決まります。1か月単位なら、31日の月177.1時間・30日の月171.4時間・28日の月160.0時間です。

計算例:10時間の日と8時間の日

1か月単位の変形労働時間制で、繁忙日を「所定10時間」、通常日を「所定8時間」と定めたシフトを例にします。

ケース働いた時間残業になる時間
所定10時間の日10時間0時間(計画どおりなら8時間超でも残業なし。ここが変形の効果)
所定10時間の日11時間1時間(定めた10時間を超えた分)
所定8時間の日9時間1時間(8時間を超えた分。「暇だった別の日と相殺」はできない)

残業と判定された時間には、通常どおり25%以上(月60時間を超えた部分は50%以上)の割増賃金が必要です。単価は「月給 ÷ 月平均所定労働時間 × 割増率」。計算手順は 残業代の計算方法 をご覧ください。

変形でも変わらないルール

  • 深夜割増(22時〜5時・+25%)法定休日割増(35%)は、変形労働時間制でもそのまま必要です。
  • 36協定も必要です。変形はあくまで所定の組み方の制度で、残業をさせる根拠にはなりません(→ 36協定とは)。
  • 月60時間超の50%割増も同じく適用されます。

実務でよくある間違い

  • シフトを後から書き換える。「忙しくなったから今日は10時間の日にする」は認められません。所定は事前に特定するのが大原則で、事後変更した分は残業として扱われます。
  • 暇な日との相殺。「昨日1時間多く働いたから今日1時間早帰りで帳消し」は、日単位の判定がある以上できません。昨日の1時間には割増が必要です。
  • 1年単位で途中退職者の精算漏れ。1年単位の変形労働時間制では、対象期間の途中で入社・退職した人について、実際に働いた期間で平均週40時間を超えた分の割増賃金の精算が必要です。忘れやすいポイントです。

変形労働時間制は、残業の判定が通常制より複雑です。日々の実績を正確に集計する体制(勤怠集計)とセットで運用してください。

単価をすぐ計算する

残業代 計算ツールでは、月給と残業時間から割増賃金をすぐに確認できます。固定残業代を設定している場合は 定額残業代 計算ツール で内訳を確認できます。

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あわせて読みたい: 1年単位の変形労働時間制とは1か月単位の変形労働時間制

根拠・出典

  • 1か月単位・1年単位の変形労働時間制:労働基準法 第32条の2・第32条の4。
  • 途中入社・退職者の割増賃金精算(1年単位):労働基準法 第32条の4の2。
  • 残業時間の3段階判定:行政通達(昭和63年1月1日 基発第1号ほか)。

よくある質問

変形労働時間制にすれば残業代は払わなくてよいのですか?

いいえ。あらかじめ定めた所定労働時間を超えて働かせれば、通常どおり割増賃金が必要です。変形は「計画的な8時間超え」を可能にする制度で、残業代をなくす制度ではありません。

変形労働時間制での残業はどう判定しますか?

1日単位(8時間または定めた時間超)→1週単位(40時間または定めた時間超)→対象期間単位(40時間×暦日数÷7の総枠超)の3段階で、重複を除いて数えます。

シフトをあとから変更して残業を回避できますか?

できません。所定労働時間は事前に特定するのが原則で、業務の都合による事後変更分は残業として扱われます。

深夜や休日の割増は変形労働時間制でも必要ですか?

必要です。深夜(22〜5時)は+25%、法定休日は35%の割増が別途かかります。月60時間超の50%割増も同様に適用されます。

1年単位の変形労働時間制で途中退職した人の賃金精算とは?

対象期間の途中で入社・退職した人は、実際に在籍した期間で平均して週40時間を超えて働いた分について、割増賃金の支払い(精算)が必要です。

本記事は2026年7月時点の情報をもとにした(2026年7月11日 大幅加筆)一般的な情報提供であり、個別の事案への適合性を保証するものではありません。法令は改正されることがあります。具体的なご対応は、酌井社労士事務所までお気軽にご相談ください。