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在職老齢年金はいくらから減る?|2026年4月から基準65万円に・年金が減らない給料の目安

働きながらもらう年金が減額されるのは、年金月額と給料・賞与の合計が月65万円を超えたときです(令和8年度)。2026年4月に基準が51万円から65万円へ大きく引き上げられ、減額される人はごく一部になりました。計算のしくみ、年金が減らない給料の目安、そして「働くと年金が増える」しくみまで整理します。

公開日:2026年8月12日|執筆:酌井 敦史(社会保険労務士)

在職老齢年金とは?減額のしくみ

在職老齢年金とは、厚生年金に加入して働きながら老齢厚生年金を受け取るときに、収入に応じて年金の一部または全部が支給停止されるしくみです。判定に使うのは次の2つの合計です。

  • 基本月額……老齢厚生年金(報酬比例部分)の年額 ÷ 12。老齢基礎年金や加給年金は含みません。
  • 総報酬月額相当額……標準報酬月額(おおよそ月給)+ 直近1年間の賞与合計 ÷ 12。

合計が65万円以下 → 年金は全額支給
合計が65万円超 → 支給停止額(月額)=(合計 − 65万円)÷ 2

たとえば年金月額15万円・給料55万円・賞与の月割10万円の人は、合計80万円。65万円を15万円超えるので、半分の月7.5万円が支給停止になります。この基準は65歳未満(特別支給の老齢厚生年金)も、65歳以上も、70歳以上(保険料負担はなし)も共通です。

自分の場合の停止額と「減らされない給料の上限」は、在職老齢年金 計算ツールに年金月額と給料を入れるだけで確認できます。

2026年4月から何が変わった?(51万円→65万円)

2025年に成立した年金制度改正法で、減額が始まる基準額(支給停止調整額)が月51万円から65万円へ引き上げられました。「年金が減るから」と就業時間を抑えていた高齢社員の働き控えの解消が狙いです。

この14万円の引き上げは実務への影響が大きく、これまで対象だった人の多くが減額ゼロになりました。たとえば年金月額12万円・月給45万円(賞与なし)の人は、旧基準では月3万円停止されていましたが、今は1円も減りません。なお、支給停止調整額は賃金水準に応じて毎年度見直されるため、来年度以降は金額が変わる可能性があります。

年金が減らない給料の目安【早見表】

全額もらう条件は「年金月額+総報酬月額相当額 ≦ 65万円」。給料の上限は「65万円 − 年金月額 − 賞与の月割額」で計算できます。賞与がない場合の早見表です。

老齢厚生年金の月額年金が減らない給料の上限(月額)年収ベースの目安
10万円55万円まで660万円
12万円53万円まで636万円
15万円50万円まで600万円
18万円47万円まで564万円
20万円45万円まで540万円

賞与を出す場合は、年間賞与÷12のぶんだけ月給の上限が下がります。月給と賞与の配分を変えても判定は変わらない(どちらも月額換算で合算される)ので、「賞与を厚くして月給を下げる」方法では回避できません。役員報酬や再雇用の給与を設計するときは、この上限を先に確認しておくと確実です。

減額の対象にならない収入・年金は?

在職老齢年金の対象は意外と狭く、次のものは減額されません

  • 老齢基礎年金(国民年金)と経過的加算……給料がいくら高くても全額支給されます。止まる可能性があるのは老齢厚生年金(報酬比例部分)だけです。
  • 厚生年金に加入しない働き方の収入……個人事業主・フリーランス(業務委託)の報酬、不動産収入、厚生年金の加入対象外となる短時間勤務の給料は、金額に関係なく対象外です。

つまり「定年後は業務委託契約に切り替えて働く」「厚生年金の加入対象にならない範囲の短時間で働く」場合は、どれだけ稼いでも年金は満額もらえます。ただし業務委託への切り替えは、実態が雇用のままだと偽装請負の問題が生じます。契約形態は働き方の実態に合わせてください。

働くと年金が「増える」しくみもある(在職定時改定)

減額の話ばかりが注目されますが、逆のしくみもあります。65歳以上70歳未満で厚生年金に加入して働くと、毎年10月に年金額が再計算されて増えていきます(在職定時改定・2022年4月開始)。月給20万円で1年働くと、翌年の年金が年間約1.3万円増えるイメージです。

また、支給停止された分はあとで戻ってこず、繰下げ増額の対象にもなりません。「65万円以内に収めて全額もらいながら、在職定時改定で増やす」のが、長く働く人にとって一番損のない形です。

在職老齢年金でよくある誤解・注意点

  • 「働いたら年金が必ず減る」は誤りです。減るのは合計が月65万円を超える場合だけ。厚生労働省の想定でも、対象になるのは在職受給者の一部です。
  • 65歳前だけ厳しい基準、は過去の話です。以前は65歳未満は月28万円という厳しい基準でしたが、2022年4月に統一されました。
  • 高年齢雇用継続給付を受けると追加の調整があります。65歳未満で同給付を受ける場合、標準報酬月額の最大0.35%(2025年4月以降の新規受給者)がさらに支給停止されます。
  • 失業保険(基本手当)とは併給できません。65歳前にハローワークで求職の申込みをすると、特別支給の老齢厚生年金は全額支給停止されます。在職老齢年金とは別のルールなので混同に注意してください。

参考・出典

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よくある質問

在職老齢年金はいくらから減額されますか?

老齢厚生年金の月額と給料・賞与の月額換算(総報酬月額相当額)の合計が、月65万円(令和8年度の支給停止調整額)を超えたときです。超えた分の半分の年金が支給停止されます。合計が65万円以下なら、年金は1円も減りません。

2026年4月から在職老齢年金はどう変わりましたか?

減額が始まる基準額(支給停止調整額)が、月51万円から月65万円へ大幅に引き上げられました。2025年に成立した年金制度改正法によるもので、これにより年金を減額される人は大きく減り、「年金が減るから働き控える」必要がある人はごく一部の高収入層に限られるようになりました。

65歳前にもらう年金(特別支給の老齢厚生年金)でも基準は同じですか?

同じです。以前は65歳未満だけ厳しい基準(月28万円)でしたが、2022年4月に統一され、現在は65歳未満・65歳以上・70歳以上のすべてで同じ計算式・同じ基準額が使われます。70歳以上は厚生年金保険料の負担はありませんが、在職老齢年金による調整は対象です。

年金を減らされない働き方はありますか?

あります。第一に、年金月額と給料・賞与の月額換算の合計を65万円以内に収める給与設計です。第二に、厚生年金に加入しない働き方(個人事業主・フリーランスとしての業務委託や、加入対象外の短時間勤務)なら、収入がいくらあっても在職老齢年金の対象になりません。なお、老齢基礎年金(国民年金)はどんな働き方でも減額されません。

在職定時改定とは何ですか?

65歳以上70歳未満で厚生年金に加入して働く人の年金額を、毎年10月に計算し直して増やすしくみです(2022年4月開始)。以前は退職まで年金額に反映されませんでしたが、現在は働いて納めた保険料が毎年年金額に上乗せされていきます。働き続けることには「年金が減るリスク」だけでなく「年金が増えるメリット」もあります。

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