3つの選択肢を比較表で整理
| 国民健康保険 | 任意継続 | 家族の扶養 | |
|---|---|---|---|
| 保険料 | 前年の所得で計算(市区町村ごとに違う) | 退職時の約2倍(標準報酬月額の上限32万円) | ゼロ |
| 家族の扱い | 扶養なし。1人ずつ保険料がかかる | 扶養あり。家族分の追加保険料なし | — |
| 加入できる条件 | 誰でも可 | 退職前に被保険者期間が継続2か月以上 | 年収見込み130万円未満など |
| 手続き期限 | 退職翌日から14日以内(市区町村) | 退職翌日から20日以内(協会けんぽ等) | すみやかに(家族の勤務先) |
| 期間 | 制限なし | 最長2年(途中でやめられる) | 条件を満たす間 |
傷病手当金は、任意継続でも新規の支給は受けられません(在職中から受給している分の継続給付は別)。給付内容は3つとも大きな差はなく、比較のポイントはほぼ保険料です。
選び方は「この順番」で考える
- 家族の扶養に入れるか確認する……今後の年収見込みが130万円未満(60歳以上は180万円未満)なら、配偶者や子どもの健康保険の扶養に入れる可能性があります。保険料ゼロなので、入れるならこれが第一候補。扶養判定ツールで条件を確認できます。ただし失業保険を受給する間(基本手当日額3,612円以上)は扶養に入れないため、受給スケジュールとの調整が必要です。
- 国保の保険料を計算する……国民健康保険料 計算ツールに前年の収入を入れると、お住まいの市の年額・月額が出ます。
- 任意継続の保険料と比べる……在職中の給与明細の健康保険料(本人負担分)の約2倍が目安です。ただし標準報酬月額に上限32万円があるため、給与が高かった人ほど「2倍」より安く収まります。協会けんぽ(三重)なら上限での保険料は月約36,400円(40〜64歳・介護保険料込み)です。
計算例:前年給与400万円・45歳の人が伊勢市で退職したら
単身の場合の比較です。
| 国民健康保険(伊勢市・令和8年度) | 年 約387,900円(月 約32,300円) |
|---|---|
| 任意継続(協会けんぽ三重・介護分込み) | 年 約437,300円(月 約36,400円) |
このケースでは国保のほうが年5万円ほど安い結果になりました。ただし、これは単身の場合です。収入のない配偶者と子ども2人がいる家庭なら、国保は4人分の均等割(伊勢市で年約17万円分)が上乗せされる一方、任意継続は家族が何人いても同じ保険料。家族が多いほど任意継続が有利に傾きます。自分の条件で必ず両方を計算してください。
「1年目は任意継続、2年目から国保」の合わせ技
国保の保険料は前年の所得で決まるため、退職して収入が下がれば2年目の国保は大きく安くなります。そこで使えるのが切り替えの合わせ技です。
- 1年目……前年所得が高いので、上限のある任意継続を選ぶ。
- 2年目……前年(=退職後)の所得が下がったタイミングで任意継続をやめ、国保に切り替える。
以前は任意継続を自分の都合でやめることができませんでしたが、2022年1月の法改正で申出によりいつでもやめられるようになり、この方法が正式に使えるようになりました。やめる申出をすると翌月1日に資格を失うので、切れ目なく国保の手続きをしてください。
手続き期限に注意|任意継続は「20日」を過ぎたら選べない
- 任意継続……退職日の翌日から20日以内に協会けんぽ(健康保険組合の場合は組合)へ申請。この期限は原則延長されません。
- 国民健康保険……退職日の翌日から14日以内に市区町村の窓口へ。遅れても加入はできますが、保険料は資格発生日までさかのぼって支払います。
- 家族の扶養……家族の勤務先経由ですみやかに。健康保険の空白期間を作らないよう、退職前に必要書類(離職票の写しなど)を確認しておくとスムーズです。
退職前後の手続き全体の流れは 退職手続きガイド・役所での切り替え手続き にまとめています。
よくある誤解・注意点
- 「任意継続は会社が手続きしてくれる」は誤りです。本人が自分で協会けんぽに申請します。会社の退職手続きとは別です。
- 「扶養は前年の収入で判定される」は誤りです。判定は今後の見込み収入。退職前の年収が高くても、退職後に働かないなら扶養に入れます。
- 国保には扶養がありません。収入のない家族にも1人ずつ均等割がかかります。家族の人数がそのまま保険料に響きます。
- 倒産・解雇などの離職なら国保が大幅に安くなります。非自発的失業者の軽減(前年の給与所得を30%として計算)が使えるため、この場合は国保が有利になりやすいです。ハローワークの離職票の離職理由コードで判定されます。
参考・出典
- 任意継続被保険者制度(加入条件・20日以内・任意脱退):健康保険法・協会けんぽ「任意継続被保険者となるための手続き」。
- 任意継続の標準報酬月額の上限(32万円・令和8年度):協会けんぽ。
- 国民健康保険の加入手続き(14日以内)・非自発的失業者の軽減:国民健康保険法・各市区町村。
- 被扶養者の認定基準(130万円未満):厚生労働省通知。
関連する無料ツール・コラム
- 国民健康保険料 計算ツール|前年の収入から国保の年額・月額を計算
- 健康保険の扶養判定ツール|扶養に入れるかチェック
- 社会保険料 計算ツール|在職中の保険料(任意継続の目安に)
- コラム:退職・入社の役所手続き/退職手続きで会社がやること/失業保険受給の流れ
よくある質問
退職後の健康保険にはどんな選択肢がありますか?
3つあります。①市区町村の国民健康保険に入る、②会社の健康保険を最長2年続ける任意継続、③家族の健康保険の扶養に入る、です。保険料ゼロの扶養に入れるなら扶養が第一候補。入れない場合は、国保と任意継続の保険料を比べて安いほうを選びます。
任意継続と国民健康保険はどちらが安いですか?
前年の収入と家族構成によって変わります。国保は前年の所得で計算されるため、退職1年目は収入が高かった人ほど高額になり、任意継続(退職時の保険料の約2倍・標準報酬月額の上限32万円)のほうが安いことが多くなります。一方、収入が低めだった人や単身の人は国保が安いケースもあります。また国保には扶養がないため、収入のない家族が多い人は任意継続が有利になりやすいです。両方の金額を計算して比べるのが確実です。
任意継続の手続き期限はいつまでですか?
退職日の翌日から20日以内に、協会けんぽ(または健康保険組合)へ申請が必要です。この期限は原則延長されず、1日でも過ぎると任意継続は選べなくなります。国民健康保険への切り替えは14日以内が原則です。退職前に、どちらにするかの比較を済ませておくのがおすすめです。
任意継続は途中でやめられますか?
やめられます。以前は原則2年間やめられませんでしたが、2022年1月の法改正で、申出により任意にやめられるようになりました。これにより「退職1年目は任意継続、前年所得が下がった2年目から国保に切り替える」という保険料を最小化する使い方ができます。
退職後に家族の扶養に入る条件は何ですか?
今後の年収見込みが130万円未満(60歳以上・障害者は180万円未満)で、かつ被保険者(家族)の収入の原則2分の1未満であることが基本です。判定は「退職後の見込み収入」で行うため、退職前の年収が高くても、退職後に働かないなら扶養に入れます。失業保険を受給する場合は、基本手当日額3,612円以上だと受給中は扶養に入れない点に注意してください。