変わるのは3つ。まず「通知書に1項目追加」が最優先
今回の改正は、パートタイム・有期雇用労働法の関係で3本立てです。会社の作業として最初に手を付けるのは1つ目です。
| 何が | 内容 | 会社の対応 |
|---|---|---|
| ① 雇入れ時の明示事項 | 「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる旨」を追加(施行規則) | 通知書の様式を差し替える。10月1日以降の採用・契約更新分から |
| ② 同一労働同一賃金ガイドライン | 賞与・退職手当・各種手当・福利厚生の待遇差について、考え方と具体例を追加(告示) | 自社の手当・賞与・休暇の支給条件を点検する |
| ③ 雇用管理の指針 | 福利厚生施設の利用、公正な評価、過半数代表者の要件、正社員転換の進め方などを改正(告示) | 就業規則の変更手続きと社内の運用を見直す |
① 通知書に書く「特定事項」が4つから5つに
パート・有期雇用の人を雇い入れるとき、一般の労働条件(賃金・労働時間・休日など)に加えて、これまでは4つの「特定事項」を文書で明示する必要がありました。昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無、相談窓口の4つです。
2026年10月1日からは、ここに「通常の労働者との待遇の相違(内容・理由)等について説明を求めることができる旨」が加わり、5つになります。厚生労働省の記載例は次のとおりです。
次の窓口に対して通常の労働者との間の待遇の相違(内容・理由)等について説明を求めることができる。
部署名:○○部 担当者職氏名:○○ (連絡先:○○○○)
「通常の労働者」は自社の呼び方(「正社員」など)に置き換えて構いません。窓口は、すでに明示している相談窓口と同じ部署・担当者で問題ありません。明示を怠ると10万円以下の過料の対象です。当サイトの労働条件通知書 作成ツールは、パート・有期のひな形すべてにこの行を入れてあります。
ここで「10月より前に雇った人はどうするの?」と思った方もいるはずです。明示義務は雇入れ時のものなので、在籍中の人に改めて交付する義務はありません。ただし、契約更新のときは新しい様式で交付するのが確実です。
② 賞与・手当の待遇差はどう見直す?ガイドラインに追加された考え方
同一労働同一賃金ガイドラインは、正社員とパート・有期の人との間で、どんな待遇差が「不合理」にあたるかの考え方と具体例を示したものです。今回、次の内容が追加されました。
| 待遇 | 追加された考え方 |
|---|---|
| 賞与・退職手当 | 支給の目的には「労務の対価の後払い」「功労報償」などがある。その目的がパート・有期の人にも当てはまるのに、職務の内容などの違いに応じたバランスのとれた支給をしない場合は、不合理と認められる可能性がある |
| 無事故手当 | 正社員と業務の内容が同じパート・有期の人には、同一の無事故手当を支給しなければならない |
| 家族手当 | 契約更新を繰り返しているなど、相応に継続的な勤務が見込まれる人には、同一の家族手当を支給しなければならない |
| 住宅手当 | 「転居を伴う配置転換の有無」に応じて支給する手当なら、正社員と同じ配置転換があるパート・有期の人には同一の住宅手当を支給しなければならない |
| 福利厚生施設 | 料金・割引率などの利用条件に、不合理な差を設けてはいけない |
| 褒賞(永年勤続表彰など) | 「一定期間の勤続」に対する褒賞なら、同じ期間勤続した人には同一の褒賞を |
| 夏季冬季休暇 | パート・有期の人にも正社員と同一の夏季冬季休暇を付与しなければならない |
| 病気休職 | 正社員に病気休職中の給与保障があるなら、継続的な勤務が見込まれるパート・有期の人にも同一の給与保障を |
ポイントは「支給しないなら理由が説明できるか」です。たとえば賞与を「会社の業績への貢献に報いるため」に出しているなら、パートの人も同じ業務で貢献しているのに一律ゼロ、という状態は説明がつきません。金額に差をつけること自体は認められます。働き方や役割の違いに応じたバランスのとれた差になっているかを確認してください。
点検のときに注意する4つの考え方
ガイドラインには、待遇ごとの具体例のほかに、点検の前提になる考え方も追加されています。ここを外すと、せっかく見直しても効果がありません。
- 正社員の待遇を下げて差をなくすのはNG。待遇差を解消するときは、パート・有期の人の待遇を改善する方向で対応します。
- 「定年後の再雇用だから」だけでは不合理でないとは言えません。再雇用の有期契約でも、待遇ごとの性質・目的に照らして判断されます。
- 「正社員の人材確保・定着のため」という理由だけでも足りません。その待遇の他の性質・目的もあわせて見られます。
- 無期雇用のフルタイム(無期転換後の人や「多様な正社員」)も無関係ではありません。法律の直接の対象ではありませんが、労働契約は均衡を考慮して結ぶものとされ、有期から無期に転換する前に不合理な待遇差がないか点検し、あれば確実に解消することが求められます。
③ 雇用管理の指針で変わること(就業規則の手続きに注意)
3つ目の改正は、会社が取り組むべき雇用管理の内容を定めた指針です。実務で影響が大きいのは次の点です。
- パート・有期に関する就業規則を作る・変えるときは、パート・有期の過半数代表者の意見を聴くよう努める。その代表者は、管理監督者でないこと、意見を聴く目的を明らかにした投票や挙手などで選ばれ、会社の意向で選ばれていないことが要件です。代表者として正当な行為をしたことを理由に不利益に扱ってはならず、事務がしやすいよう配慮(スペース・機器の提供など)が必要です。
- 賃金は公正な評価にもとづいて決める。職務の内容や成果、意欲、能力、経験などを評価して昇給に反映するのが望ましいとされ、正社員と共通する職務には共通の賃金制度・評価項目を設けることが例示されています。
- 福利厚生施設の利用に配慮する。売店・診療所・保育所・図書室・運動場・保養施設・駐車場などの利用について、パート・有期の人にも便宜を図るよう配慮します。
- 正社員転換の進め方を工夫する。制度を設けたうえで複数の措置を講じることが望ましく、契約更新の面談やメールで対象者の意向を確認し、配慮することが求められます。転換制度の内容と実績はホームページなどで定期的に公表するのが望ましいとされました。
- 待遇差の説明は「資料を使って口頭で」または「資料の交付」で。口頭の場合も資料を渡すのが望ましく、個人情報の関係で渡せない場合は事後に閲覧できる工夫を求められます。説明を求められていなくても、契約更新時に待遇差の内容・理由をまとめた資料を渡すことが望ましいとされています。
- 職業能力開発促進法(職業訓練や自己啓発の援助)はパート・有期の人にも適用されることに留意します。
10月までに会社がやること
- 労働条件通知書の様式を差し替える(今すぐ)。10月1日以降の採用と契約更新から、新しい5項目の様式で交付します。
- 賞与・退職手当・各種手当・休暇の「目的」と「支給条件」を一覧にする(9月中)。手当ごとに「なぜ払うのか」「誰に払うのか」を書き出すと、パートに当てはまる目的の手当が見えてきます。
- 差がある待遇は、理由を文章にしておく。説明を求められたときに、その場で答えられる状態にします。理由が書けない待遇差は、10月以降の見直し候補です。
- パート・有期の就業規則を変えるなら、代表者の選び方から。投票や挙手で選んだ記録を残し、意見聴取の記録も保管します。
参考・出典
- 厚生労働省リーフレット「パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります(令和8年10月1日施行)」(令和8年4月作成・リーフレットNo.11)。
- 厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」。改正後のモデル労働条件通知書もここから入手できます。
- パートタイム・有期雇用労働法 第6条(労働条件の文書交付)・第8条(不合理な待遇の禁止)・第14条(説明義務)、同法施行規則。
- お問い合わせ先:三重労働局 雇用環境・均等室 059-226-2318(受付 8:30〜17:15、土日祝・年末年始を除く)。
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よくある質問
2026年10月からパート・有期雇用の労働条件通知書は何が変わりますか?
雇入れ時に文書で明示する特定事項に「通常の労働者との待遇の相違の内容・理由等について説明を求めることができる旨」が追加され、昇給・退職手当・賞与の有無、相談窓口とあわせて5項目になります。2026年10月1日以降の採用や契約更新から新しい様式で交付し、明示を怠ると10万円以下の過料の対象です。
10月より前から働いているパートの人にも、新しい通知書を渡す必要がありますか?
明示義務は雇入れ時に生じるものなので、在籍中の人に改めて交付する法的義務はありません。ただし有期契約の更新時は新たな雇入れにあたるため、更新のタイミングで新しい様式を交付してください。無期のパートの人にも周知しておくと、説明を求められたときの対応がスムーズです。
パートに賞与を出していない会社は、10月から違法になりますか?
賞与を出さないこと自体が直ちに違法になるわけではありません。ただし、賞与の目的(労務の対価の後払い、功労への報償など)がパートの人にも当てはまるのに、働き方や役割の違いに応じたバランスのとれた支給をしていない場合は、不合理な待遇差と認められる可能性があります。「なぜ払わないのか」を説明できる状態にしておくことが必要です。
待遇差をなくすために、正社員の手当を減らして合わせてもよいですか?
認められません。ガイドラインでは、不合理な待遇差を解消するときは正社員の労働条件を不利益に変更するのではなく、パート・有期の人の労働条件を改善する方向で対応することが求められています。正社員の手当を下げる方法は労働条件の不利益変更の問題も生じます。
待遇差の説明を求められたら、どう説明すればいいですか?
待遇差の内容と理由、考慮した事項を、資料を使って口頭で説明するか、説明事項をすべて記載した分かりやすい資料を交付して説明します。口頭で説明した場合も、使った資料を渡すのが望ましいとされています。説明を求められていなくても、契約更新時に待遇差の内容・理由をまとめた資料を渡すことが望ましい対応です。