「失業保険をもらっている間はいっさい働けない」と思っている方が多いのですが、そうではありません。ハローワークが問題にするのは、働いたこと自体ではなく申告せずに手当を受け取ることです。ルールを知って正しく申告すれば、生活の足しにアルバイトをしながら受給を続けられます。
ここで「どこまでなら大丈夫なの?」と思った方のために、まず2本の線を押さえましょう。
押さえる線は2本。「1日4時間」と「週20時間」
ハローワークは、働いた日を「1日の労働時間が4時間以上か未満か」で分けます。さらに仕事の契約そのものが「週20時間以上か」で、受給を続けられるかどうかが決まります。組み合わせると次の3パターンです。
| 働き方 | ハローワークの扱い | その日の手当 | 申告 |
|---|---|---|---|
| 週20時間未満で、1日4時間未満 | 内職・手伝い | 収入しだいで減額(減らないことも多い) | 必要 |
| 週20時間未満で、1日4時間以上 | 就労 | 支給されず、後ろに繰り越し | 必要 |
| 週20時間以上(31日以上働く見込み) | 就職 | 受給が止まる(再就職手当の対象になることも) | 就職の届出 |
「4時間」は1日ごとに見ます。月曜に5時間、火曜に3時間なら、月曜は就労、火曜は内職・手伝いとして別々に扱われます。無給の家業の手伝いやボランティアも、4時間以上なら就労として申告が必要です。
4時間以上働いた日は、手当が「なくなる」のではなく「ずれる」
1日4時間以上働いた日は、その日の基本手当が支給されません。ただし所定給付日数(90日・120日など)は減りません。支給されなかった日の分は、受給の最後に後ろへ繰り越されます。
注意点は1つだけです。基本手当を受け取れる期間は、原則として離職日の翌日から1年間と決まっています(受給期間)。働いた日が多くて後ろにずれすぎると、1年を過ぎた分は受け取れずに消えます。給付日数が多い方や、給付制限で開始が遅れた方は、この1年の期限を意識してください。
4時間未満の日は、収入によって減額になることがある
1日4時間未満の内職・手伝いは、収入の額によって3段階に分かれます。計算に使うのは、その日の収入、控除額(2026年8月1日から1,429円。毎年8月に見直し)、あなたの基本手当日額、そして離職前の賃金日額です。
- 減額なし:(収入 − 1,429円)+ 基本手当日額 が、賃金日額の80%以内
- 一部減額:合計が賃金日額の80%を超えたとき、超えた分だけ手当が減る
- その日は不支給:(収入 − 1,429円)だけで賃金日額の80%以上になるとき。この日は就労と同じく後ろに繰り越し
言葉だけではわかりにくいので、具体例で見ましょう。離職前の月給が30万円(賃金日額1万円)、40歳の方の基本手当日額は6,307円です。賃金日額の80%は8,000円になります。
| その日の働き方 | 収入 | 収入 − 1,429円 | 手当との合計 | 結果 |
|---|---|---|---|---|
| 2時間 × 時給1,100円 | 2,200円 | 771円 | 7,078円 | 8,000円以内 → 減額なし(6,307円) |
| 3時間 × 時給1,100円 | 3,300円 | 1,871円 | 8,178円 | 178円超過 → 178円減額(6,129円) |
| 3.5時間 × 時給1,200円 | 4,200円 | 2,771円 | 9,078円 | 1,078円超過 → 1,078円減額(5,229円) |
| 3時間 × 時給3,000円(専門職の単発) | 9,000円 | 7,571円 | — | 7,571円だけでは8,000円未満なので一部減額。もし収入が9,429円以上ならその日は不支給 |
一般的な時給で3時間程度なら、減っても数十円から数百円です。「バイトをすると損」というほどの影響はありません。ご自身の基本手当日額と賃金日額は 失業保険 計算ツール で確認できます。
週20時間以上の仕事は「就職」。受給は止まるが、再就職手当が出ることも
契約上の週の労働時間が20時間以上で、31日以上働く見込みがある仕事は、雇用保険の加入対象です。この条件に当たる仕事を始めると、アルバイトという名前でも「就職した」扱いになり、基本手当の支給は止まります。短期のつなぎのつもりでも、契約が週20時間以上なら同じです。
ただし悪い話ばかりではありません。所定給付日数が3分の1以上残っている状態で就職すると、残りの日数の60%(3分の2以上残っていれば70%)の額を再就職手当として一括で受け取れる場合があります。週20時間以上で長く働くつもりなら、手当が止まるのを惜しむより、再就職手当を受けて早く働き始めるほうが手元に残るお金は多くなることがほとんどです。
受給を続けたい場合は、面接のときに「週の所定労働時間は20時間未満で」と契約条件を確認してください。実際の勤務が週20時間を超える月が続くと、契約上は未満でも就職と判断されることがあります。
待期の7日間は働かない。給付制限中は週20時間未満なら影響なし
ハローワークで受給資格が決まった日から7日間は「待期」です。この7日間は、失業している日を数えて確認する期間なので、働いた日は数えられません。1日働けば待期が1日延び、手当の開始もその分遅れます。待期中はアルバイトを入れないでください。
自己都合で退職した方は、待期のあとに給付制限があります。2025年4月からは原則1か月です(5年以内に3回以上自己都合で辞めた場合は3か月)。この期間はまだ手当が出ていないので、週20時間未満のアルバイトをしても減額の計算はありません。ただし働いた日と収入は、給付制限が終わったあとの最初の認定日に、失業認定申告書へ書く必要があります。
申告のしかた。失業認定申告書は「働いた日」に○か×をつける
4週間ごとの認定日に提出する失業認定申告書には、カレンダーのような欄があります。働いた日に、4時間以上なら○、4時間未満なら×をつけます。そのうえで、収入があった日と金額、働いた先の名前を記入します。
迷いやすいのは次の3点です。
- 働いた日と、給料が振り込まれた日は別に書く。○×は働いた日につけ、収入は「収入のあった日」と金額を書きます。月末締め翌月払いなら、収入欄は翌月の申告に載ります。
- 無給でも働いたら申告する。家業の手伝い、知人の店の手伝い、ボランティアも対象です。収入がないことは金額欄に書きます。
- 働くことが決まったら、事前に相談する。週20時間以上になりそうな仕事は、始める前にハローワークの窓口で「就職」に当たるか確認しておくと、あとで手当を返す事態を避けられます。
認定日の窓口では、申告書を見た職員から労働時間や収入について質問されることがあります。給与明細やシフト表を持っていくと、その場で確認が終わります。
申告しないと「3倍返し」。バレない前提は成り立たない
働いた日を隠して手当を受け取ると、不正受給です。発覚した日以降の手当はすべて止まり、不正に受け取った額を返還したうえで、さらに最大でその2倍の額の納付を命じられます。合わせて受け取った額の3倍を支払うことになるため「3倍返し」と呼ばれます。悪質な場合は刑事告発の対象です。
ハローワークは、雇用保険の加入記録、事業所への立入調査、給与の支払い記録、そして通報から把握します。とくに週20時間以上の仕事は勤め先が雇用保険の加入手続きをするため、その時点で記録が照合されます。数百円の減額を惜しんで数十万円の返還になるのは、割に合いません。
こんな場合はどうなる?
フリマアプリで不用品を売った:働いた対価ではないので、申告の対象ではありません。ただし継続的に商品を仕入れて売る「事業」の形になると就労・就職の扱いになります。
在宅のネット副業(ライティング・データ入力など):内職に当たります。作業した日に×をつけ、報酬を収入として申告します。作業時間が1日4時間以上なら○です。
個人事業として開業した:開業届を出す、継続的に事業を始めるといった時点で「就職」と同じ扱いになり、基本手当は受け取れません。条件を満たせば再就職手当の対象になります。
65歳以上で退職した:受け取るのは基本手当ではなく「高年齢求職者給付金」という一時金です。認定日は1回だけで、その後に働いても返還は求められません。
参考・出典
- 雇用保険法 第19条(基本手当の減額)・第33条(給付制限)・第34条(不正受給)・第20条(受給期間)
- 厚生労働省「雇用保険の基本手当日額の変更(令和8年8月1日〜)」:基本手当日額の上限・下限、控除額1,429円
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」「雇用保険の具体的な手続き」:失業認定申告書の書き方、就労・内職の区分
- 厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)」:自己都合退職の給付制限の短縮(2025年4月1日施行)
控除額と基本手当日額は毎年8月1日に改定されます。この記事の数値は2026年8月1日からのものです。
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よくある質問
失業保険の受給中にアルバイトをしたら、必ず手当は減りますか?
減るとは限りません。1日4時間未満の内職・手伝いは、その日の収入から控除額1,429円(2026年8月1日〜)を引いた額と基本手当日額の合計が、離職前の賃金日額の80%以内なら減額されません。超えた分だけ減額され、収入が大きいとその日は不支給(後ろに繰り越し)になります。1日4時間以上働いた日は減額ではなく、その日の手当が支給されずに後ろへずれます。
1日4時間以上働いた日の失業保険は、なくなってしまうのですか?
なくなりません。その日は「就労した日」として基本手当が支給されませんが、所定給付日数は減らず、後ろに繰り越されます。ただし受給できるのは原則として離職日の翌日から1年間(受給期間)なので、働いた日が多いと1年以内に受け取りきれず消える分が出ることがあります。
週20時間以上のアルバイトをすると、失業保険はどうなりますか?
週の所定労働時間が20時間以上で31日以上働く見込みの仕事は雇用保険の加入対象となるため、「就職した」扱いになり、基本手当の支給は止まります。短期のアルバイトでも契約上の週の労働時間が20時間以上ならハローワークは就職と判断するのが通常です。所定給付日数が3分の1以上残っていれば、再就職手当の対象になることがあります。
給付制限の期間中や待期の7日間にアルバイトをしてもいいですか?
待期の7日間に働くと、その日は失業していた日に数えられず、待期が延びて手当の開始が遅れます。待期中は働かないでください。自己都合退職の給付制限(2025年4月から原則1か月)の期間中は、週20時間未満のアルバイトなら受給に影響しません。ただし働いた日と収入は、最初の認定日に失業認定申告書で申告する必要があります。
アルバイトの収入を申告しなかったらどうなりますか?
不正受給になります。発覚すると、その日以降の基本手当がすべて支給停止となり、不正に受け取った額の返還に加えて、最大でその2倍の金額の納付を命じられます(いわゆる3倍返し)。悪質な場合は刑事告発されることもあります。ハローワークは雇用保険の加入記録や事業所への調査、通報で把握しているため、「バレない」前提の行動はおすすめしません。